親鸞聖人750回大遠忌法要は無事円成いたしました。多くの方々のご参拝、誠にありがとうございました。
親鸞聖人750回大遠忌宗門長期振興計画

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仏教讃歌の新曲と新編曲について 『宗報』2011(平成23)年2月号掲載 ―新たな始まり 親鸞聖人750回大遠忌宗門長期振興計画の現状―Vol.36
宗門長期振興計画の重点項目④「伝道態勢の整備」のうち、教学伝道研究センター(本願寺仏教音楽・儀礼研究所)で取り組んでいる、仏教讃歌の新曲制作と既存曲の新編曲について紹介いたします。

現代の仏教文化として

仏教讃歌は、明治以降に生まれた、新しい仏教文化のひとつです。
 仏教あるいは浄土真宗の歴史、そしてそれらのなかで育(はぐく)まれた声明(しょうみょう)や雅楽(ががく)などの仏教音楽の歴史に比すれば、仏教讃歌のそれは、わずかに百年ほどの短いものでしかありません。しかし、現代におけるその隆盛──特に私たちの宗門において──は、仏教文化として特筆すべきものがあります。
 本願寺仏教音楽・儀礼研究所では、仏教讃歌という文化のさらなる興隆に資するため、長期振興計画の一環として、新曲制作と既存曲の新編曲に取り組んでいます。

(2)歌の不易(※ふえき)と流行①

 ── 求められる新しい讃歌 歌は世につれ、世は歌につれ ── と言われるように、好まれる音楽の種類には、流行り(はや )廃り(すた )があります。
 親鸞聖人は、当時の流行歌であった今様(いまよう)の節で、人々が口ずさむことを念頭に、ご和讃を執筆されたといわれています。広くみ教えを伝えることが、仏教讃歌の役割の一つであると考えるならば、仏教讃歌にも、それぞれの時代にあったスタイルが求められるでしょう。
 特に、情報流通のスピードが速い現代では、流行りのスタイルもめまぐるしく変化しています。それだけに、新しいスタイルによる作品の創作は、仏教讃歌に対する取り組みにおいて、常に考えておかねばならない点のひとつです。
2010年度奉讃演奏会での新曲発表 2010年度奉讃演奏会での新曲発表

(3)歌の不易(ふえき)と流行②

 ──世代を越える讃歌
 また同時に、研究所では、世代を超えて一緒に歌われる仏教讃歌の大切さにも、着目しています。
 例えば、私たちの宗門の場合、法要や行事の際に歌われる《恩徳讃》や《真宗宗歌》、愛唱歌として親しまれている《旅ゆくしんらん》や《聖夜》などが挙げられるでしょう。
 一般の社会でいえば、それらの作品は、校歌や社歌など、いわゆる“共同体の歌”にあたります。例えば校歌の主たる目的は、生徒が各種の学校行事で歌うことで、その学校の生徒であるという意識を養うことにほかなりません。このように、共同体の歌には、人々の帰属意識を高めるという働きもあるのです。
 先に挙げた《恩徳讃》や《真宗宗歌》は、この意味で、一所(ひとところ)に集うものが、世代を超えて一緒に歌うことのできる讃歌となっています。まさに、親鸞聖人のみ教えをいただいた仲間、あるいは浄土真宗の御同朋という自覚を促してくれる“サンガの歌”なのです。

(4)歌の不易(ふえき)と流行③

 ──心に刻まれたメロディー
 そして、共同体の歌がもたらす効果としては、人がその共同体から一旦離れた後のことも考えておく必要があります。
 例えば、卒業後に行われる同窓会においては、校歌をみんなで歌うことによって、場が一層の盛り上がりを見せます。
 これは、校歌というアイテムが、一緒に歌う者同士「仲間である」と改めて意識させてくれる、つまりその場が「自分の居場所」であることを認識させてくれるからに他なりません。
 これを仏教讃歌のケースにあてはめてみると──例えば、お寺から少し離れた生活を送っているときに、何らかの縁で、久しぶりにお寺に足を運ぶことがあったとしましょう。その時、幼き日にお寺の日曜学校や幼稚園で歌った曲、あるいは両親や祖父母に連れられてお寺にお参りした時に聴いていた曲を耳にすると、懐かしさと同時にちょっとした安堵を覚える方は、決して少なくないはずです。
 メロディーとは、その時々に人の感情を揺り動かすだけではなく、さまざまな思い出とともに人の心に刻まれるものでもあるのです。それだけに、時代を超えてメロディーを受け継いでいくこともまた、大切なことなのです。 『讃歌集 2部合唱』(既刊分6巻)

(5)具体的な取り組み

 このような音楽のもつさまざまな性質に鑑み(かんがみ)、研究所では、新曲の制作と既存曲の新編曲という両面から、仏教讃歌に取り組んでいます。
 新作としては、親鸞聖人のご和讃を歌詞として、2007年に発表した《相好ごとに百千の》(作曲・石若雅弥)や《阿弥陀仏の御名(みな)をきゝ》(作曲・平野一郎)をはじめ、仏教讃歌を必要とする関連機関と連携の上、今年度までに10数点の作品を制作・発表してきました。写真は、本年度の奉讃演奏会(1月15日、聞法会館)で、《あなたと出逢って》(作詞作曲・江崎とし子)や《草ぶえふいていこう》(作詞・中川正文/作曲・松園洋二)が発表された時の模様です。
 また新編曲の多くは、既存曲とはいえ、時代に沿ったものとして手を加える必要が生じたことに拠っています。現在の私たちの宗門では、特に仏教婦人会を中心に、2部合唱での演奏活動や大正琴での演奏が大きな割合を占めています。こうした状況に鑑み、研究所では、それらに向けた既存作品の編曲にも取り組んでいます。
* * *
 なお、これらの作品に関しては、すでにその1部が『讃歌集 2部合唱』(全10巻、第6巻まで既刊)や大正琴のピースとして、出版されています。さらにそれらの作品は、2011(平成23)年度に刊行予定の楽譜集に収録の予定です。
 各種の活動に、仏教讃歌を活かしていただければ幸いです。
(教学伝道研究センター)
※「不易」とは、俳人・松尾芭蕉の生み出した概念「不易流行」から生まれた言葉で、芸術や文化等において、不変の真理や精神を意味する。転じて現在では、時代や環境によっても「変わらないもの」の意で用いられる。