本願寺御影堂平成大修復推進事務所だより(67) 『宗報』2005(平成17)6月号(本願寺出版社発行)掲載

御影堂の留蓋瓦および境内諸建物の獅子口瓦について

 2005(平成17)年3月16日、ご門主様、お裏方様ご臨席のもと、屋根工事終了式が挙行されました。平成15年度・16年度の2ヵ年にわたる総数 11万5千枚にも及ぶ屋根瓦葺(ふ)き上げ工事の仕上げとして据(す)えられたのが向拝(ごはい)両隅部の「留蓋瓦(とめぶたがわら)」です。今回は御影堂留蓋瓦と境内諸建物に見られる獅子口瓦(ししぐちがわら)について紹介します。

留蓋瓦とは

 留蓋瓦は、隅巴瓦(すみともえがわら)の上部に据えられた瓦で、隅蓋瓦(すみぶたがわら)や巴蓋瓦(ともえぶたがわら)とも称します(隅巴瓦については「宗報」平成16年8月号を参照ください)。もともとは隅部の接点から雨水が浸入するのを防ぐために据えられた、半球形(椀を伏せた形状)のものでした。その後、意匠(いしょう)面での発展が見られ、御影堂や阿弥陀堂に見られる「獅子」や、大玄関に見られる「玄武(げんぶ)」などの動物型、「牡丹(ぼたん)」や「菊」などの植物型のほか、「天女」や「波頭」などと、その種類は多岐にわたります。

大玄関留蓋瓦
大玄関留蓋瓦

御影堂留蓋瓦の概要

 御影堂の向拝南北両隅には、獅子付きの留蓋瓦が据えられています。北側が口を開けた「阿(あ)」の雌獅子、南側が口を閉じた「吽(うん)」の雄獅子です。通常は互いに相対し、向き合うように配置されるのですが、御影堂では北側の獅子が南側の獅子を追いかけるかのように、二体とも体が南を向き、南側の雄獅子の顔のみが北に見返すという形になります。それぞれの足元には「文化六巳歳 大佛瓦師 森田平兵衛 細工人 権兵衛」「獻上 御瓦嘲凬 池永外記 法名三□」と刻字されており、文化年間修理時の文化6年(1809)に新調されたものであることがわかります。若干の差異はあるものの、それぞれ総高約76 センチメートル、重量約67キログラムを測ります。今回の大修理では、残念ながら破損の程度が大きく再用することができず二体とも新調されました。新調瓦は重量約70キログラムと若干重くなりました。

御影堂旧留蓋瓦
御影堂旧留蓋瓦
     
御影堂旧留蓋瓦箆書(南側)   御影堂旧留蓋瓦箆書(北側)
御影堂旧留蓋瓦箆書(南側)   御影堂旧留蓋瓦箆書(北側)
     
御影堂新調留蓋瓦(南側)   御影堂新調留蓋瓦(北側)
御影堂新調留蓋瓦(南側)   御影堂新調留蓋瓦(北側)

境内諸建物の獅子口瓦

 獅子口瓦は、屋根の流れが重なり合う頂部において、雨水などの浸入を防ぐために造られた棟(むね)の、端(はし)を隠すために据えられた瓦の一種です。その後端隠しとしての役割に留まらず、装飾を兼ねたものとして発展します。

 御影堂の屋根には、建立された寛永(かんえい)年間(1636)当初のものは残されておらず、文化年間修理時の獅子口瓦を主に、安政(あんせい) 年間(1859)と明治年間(1910)に取り替えられたものが据えられていました。いずれもが大屋根の偉容を印象付けるものとなっています。

 境内諸建物の棟瓦に注目すると、御影堂以外にも多くの建物に獅子口瓦が据えられています。

 時代を追って見ていきますと、境内南端に位置する国宝唐門(からもん)は桃山時代に建てられた伏見城の遺構とも伝えられ、元和(げんな)4年(1618)に御影堂門として移築されたものです。その大棟獅子口瓦は、正面に2本の綾筋(あやすじ)、側面に3個の巴紋(ともえもん)を付し、上部に出の短い3本の経ノ巻(きょうのまき)を据えたものです。

 対面所「鴻の間(こうのま)」および白書院は寛永12年(1635)ごろにそれぞれ建てられ、その後一つの建物として改造されたと考えられています。その大棟に据わる獅子口瓦は昭和34年(1959)に行われた修理で取り替えられたものですが、修理前の姿を踏襲しており、江戸時代初期ごろの様相を呈しています。唐門同様正面に2本の綾筋、側面に3個の巴紋を付し、3本の経ノ巻を据えたものですが、唐門のものと比べると、綾筋の勾配が若干きつくなり、経ノ巻の出も前方および左右に幾分か飛び出すようになります。

 御影堂の北隣に建つ阿弥陀堂は、宝暦(ほうれき)10年(1760)に建立されており、その当時の獅子口瓦が据えられています。大棟の瓦を見ると、正面・側面ともに2本の綾筋と3個の巴紋を付し、上部には3本の経ノ巻を据えます。正面のみに付していた綾筋が側面にも廻り、経ノ巻の出も前方および左右とも大きくなっています。

 以上のように、当寺境内にはさまざまな時代の獅子口瓦があります。わずかな差異ではありますが、それらを見るだけでも建物が持つ歴史を感じることができます。

唐門大棟獅子口瓦   対面所及び白書院大棟獅子口瓦   阿弥陀堂大棟獅子口瓦
唐門大棟獅子口瓦   対面所及び白書院大棟獅子口瓦   阿弥陀堂大棟獅子口瓦
工事を終えた御影堂屋根(北東隅より)
工事を終えた御影堂屋根(北東隅より)

(京都府教育委員会)
※筆者肩書きは『宗報』掲載当時のものです

このページの先頭へ