安心を〝いただきます〟

本願寺新報 2010(平成22)年7月 1日号掲載
鈴木 寿昭(すずき じゅしょう)(布教使)

アレルギーでもOK

カット 林 義明

2年ほど前に、あるドキュメンタリー番組で、食物アレルギーの方でも食べられるケーキを作っておられる菓子職人が取り上げられていました。

現在、厚生労働省が発表している食物アレルギーの原因となる食品は25種類もあり、日本の1歳児の10人に1人が食物アレルギーに苦しんでいるとのこと。その菓子職人は、アレルギーの原因となる25種類の食品を一切使わずにケーキを作っておられました。

小麦粉の代わりに「ゆきひかり米粉」や「アマランサス」という植物の粉、「ホワイトソルガム」という高キビの粉などを使用し、クリームなどの乳製品の代わりに菜種マーガリンを使用して作られたケーキは美しく、とてもおいしそうでした。

番組が進むにつれて、1人の女の子が取り上げられました。

「4歳の誕生日に、今までアレルギーで食べられなかったケーキを食べさせてやりたい」と、お母さんがその菓子職人に誕生日ケーキを注文します。

しかし、その女の子は代用品として使ってきた食品にもアレルギー反応が出て、加えて砂糖にも反応がでる症状のお子さんでした。

その菓子職人は医師と相談して、その女の子が食べることができるケーキを作るために、試行錯誤を重ねて見事なタルトのケーキを仕上げられました。

誕生日になり、ハッピーバースデーの歌とともに、そのケーキは女の子の前に運ばれてきました。

今まで、絵本のケーキやプリンを指差して「これなあに?」と聞いても、「わからない」としか答えられなかった女の子が、ケーキを口にしてひと言、「おいしい」といって、うれしそうに笑顔をこぼしたのです。

その姿を見たお母さんは涙ぐまれ、菓子職人は一番うれしそうに女の子を見つめていました。そして、最後に夢をたずねられた菓子職人は「2015年までに、食物アレルギーで苦しむ子どもたちが、おいしいケーキを食べられるようにしたい」と話されました。

番組を見終えた後、何ともいえない感動とともに、味わいをひとつ深めさせていただきました。

常に私に寄り添って

私の地元・山形最上(もがみ)の20カ寺(現22カ寺)に、第19代のご門主・本如(ほんにょ)上人から賜(たまわ)ったご消息には「十方の諸仏に捨てられしを阿弥陀如来こそかかる機をたすけんと不可思議の大願を起こして救いたまふなり」というご文(もん)があります。

阿弥陀さまから見抜かれた私の姿は、まことのいのちのあり様を知らず、迷っていることもわからず日暮らしをしています。その「知らない」「わからない」私を何とか救わずにはおれないと、五劫(ごこう)という長い時間を費やし、四十八の願いを立ててくださいました。ケーキでいうレシピでありましょう。そして兆載永劫(ちょうさいようごう)というとてつもなく長い時間とご苦労を重ねられ、その願いを『南無阿弥陀仏』の名号(みょうごう)として完成してくださいました。

言い換えますと、そこまでのご苦労がないと、諸仏に捨てられている私を救うことができなかったといえるでしょう。

こちらからは見向きもしない私に、阿弥陀さまは姿や形をかえておはたらきくださり、み名の仏となって、常に私に寄り添ってくださっています。 また、その尊いおみ法(のり)を勧めてくださる方々がおられて、今私が『南無阿弥陀仏』に遇(あ)わせていただいているのでした。

誕生日にケーキを食べることができた女の子は「おいしい」と言いました。女の子が言った言葉ではありますが、言わしめたのはケーキです。菓子職人の真心と努力が詰まったケーキというはたらきがあったからこそ、感動が女の子の口からこぼれました。今、この口からこぼれてくださる『南無阿弥陀仏』も、この身を揺り動かすはたらきがあったからに他なりません。

菓子職人が語っていた夢は、誰でも分け隔てなく安心して食べることができるケーキを作ることとも言えます。阿弥陀さまもいつでもどこでも誰にでも分け隔てなく寄り添い、私のいのちを自分の事として案じてくださり、その安心の中でいのちを生き抜かせてくださるのです。

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