実践運動

社会部<災害対策担当>・所務部<人事担当> 悲しみとありがとうとともに

2014年07月

  • 近畿
  • 伝道本部

 「本当に、心は、悲しみは、苦しみは何も変わらないんです。毎日毎日思い出します。遺体安置所で見た父の顔、火葬まで毎日見に行った父の顔。まだ見つかっていない笑顔のままの母の顔。そして最愛の息子の顔」。
 平成26年7月10日、宗務所員・寺務所員206名が参加し、宗務所員研修会が開催され、ご講師の冒頭の言葉はこうでした。震災から3年4ヵ月、竹澤守雅さん、さおりさんご夫妻を講師にお招きし、「東日本大震災による行方不明者家族の心情について ~悲しみとありがとうとともに~」と題して、今の心情を語っていただきました。
 竹澤さんご夫妻は仙台市在住で、東日本大震災当時、8ヵ月のご子息雅人くんと3人で暮らしていました。ご夫妻は共働きで、震災の時、名取市閖上(ゆりあげ)のさおりさんの実家にご子息を預けていましたが、その実家を津波が襲いました。平成23年3月18日に遺体安置所で御父様と対面し、10月末にDNA鑑定で御祖母様の身元が判明しました。御母様とご子息雅人くんは現在も行方不明です。平成23年8月、仙台別院盂蘭盆会に雅人くんのことでご相談に来られた後、職員が何度か仙台でお会いしたり、メールでの連絡を続けていましたが、さまざまな方とのご縁のなかで、研修会でお話しいただくことになり、またこのご縁に家族で帰敬式を受式されました。
 さおりさんは平成26年1月、阪神・淡路大震災で1歳半のご子息を亡くした母親たかいさんとともに、絵本『優しいあかりにつつまれて』を出版しました。絵本が出来あがった時や節目ごとに取材を受け、その時の心情をさおりさんは、
 「取材する側の多くは、絵本を作って前向きになれたとか、元気になれた、立ち直れそう、気持ちの整理ができた...そういう言葉を私の口から出るのを期待していました。しかし私の現実は何も変わらない、そう心で叫んでいました」。
 「絵本つくりの途中、雅人と会えなくなって1000日という日がありましたが、999日も1000日も1001日も、元気な雅人と会えなければ私たちの悲しい現実は変わらない」。
 「でもふと思いました。現実は変わらない、想いも変わらない。だけど、出会いが、たくさんのご縁が、たくさんの感謝の気持ちが、ほんの少し私のこころのイガイガを減らしてくれているかもしれないなって。その分、笑顔が増えたかなって。時間ではなく、人が私を変えてくれていることは事実かもしれません」。
 「あの日、家族をなくしたからじゃなく、雅人がいなくなったからじゃなく、私には大切な家族がいたから、雅人が生まれてくれたから、だから今があるんだと思えないだろうかって。今が、望みもしない恐ろしい今だけど、その中に見える小さく強く輝くあかりは、雅人が生まれたからこその、私の人生、私の出会い。そう考えられないかなって」。
 「もちろん、毎日はそう思えません。どちらかというと、思えない日の方が多いです。それでも、時計の針を雅人と会えなくなったあの日だけに合わせるんじゃなく、たまには、あの日より前に合わせて、幸せな時間や気持ちは素直に幸せと思えたらいいなと。今までもこれからも、私が得ることができる全ての出会いは、ご縁は、雅人が生まれてくれたからこそのもの、そう思うことができる、雅人と、震災後に生まれた娘の母親で、ありたいなと思います」。
 「雅人ともう一度会えるその日が来るまで、ここで、たくさんの出会いに感謝しながらありがとうの花を集めて、きれいな花束をいっぱい作ろうと思います。そしてその花束を持って、雅人に会いたいと思います。その時は、雅人のおかげで、雅人が生まれてくれたおかげで、たくさんのありがとうの花が咲いたよと、言いたいです。それまでは主人と、娘と、悲しみとありがとうとを胸に生きていこうと思っています」。
「今日は私たちの話を聞いてくださりありがとうございます。このご縁に感謝いたします」。
 竹澤さんのお話を聞いた職員からは、「自分に置き換えられないながらもそのつらさを痛切に感じた」「本音を聞かせていただき支援と言いながら相手の立場に立っていなかったのではと考えさせられた」といった感想が寄せられました。
 東日本大震災によって名取市閖上では40名、被災地では1,600名を超える方の行方がいまなお分かっていません。置かれた状況が個々に異なるように、支援のあり方や関係性の築き方は異なってきます。報道では知ることのできない、ありのままのお気持ちをお聞かせいただきました。また、研修会では、東北教区相馬組の湯澤義秀組長より「福島県の現状及び寺院の現状について」と題して、東京電力福島第1原子力発電所事故による複雑化した現状をお聞きしました。伝道本部では、支援活動のさらなる推進を図るため、現状への学びを深め、宗務所員一人ひとりがこころのつながった活動を継続して取り組んでまいります。

【竹澤守雅さん、さおりさん】


【相馬組 湯澤義秀組長】


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