第37回千鳥ヶ淵全戦没者追悼法要にかかる「平和宣言」発表について

2017年10月05日

 毎年9月18日、宗派の恒例法要として、国立・千鳥ヶ淵戦没者墓苑(東京都千代田区)にて修行される千鳥ヶ淵全戦没者追悼法要は、第37回となる本年、台風18号の接近を受け、諸行事を取り止め、宗派や地元・築地本願寺の職員など関係者で営みました。

 法要3日前となる15日、緊急の追悼法要委員会を開催し協議した結果、台風の接近に伴う諸事情を総合的に判断して、献華、宗門校生徒の作文朗読と表彰式などの諸行事中止を決定し、参拝者の安全を第一に法要へのご参拝をご遠慮いただくこととしたものです。台風一過の18日は、早朝より天候及び現地確認を行い、13時15分より宗派、築地本願寺職員など関係者70人で、墓苑において法要を営みました。平和の願いが広く伝わることを願う「平和の鐘」の音とともに諸僧が入場。石上智康総長が「平和宣言」を読みあげ、築地本願寺の安永雄玄宗務長の調声で正信念仏偈をつとめました。

【平和宣言(日本語)】

浄土真宗本願寺派
平和宣言


 世界中で5000万人にも及ぶ人びとが犠牲になった大戦が終結して72年の歳月が経過しました。ここ国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑において、戦争によって犠牲になられた国内外すべての方々に、心から哀悼の意を表します。さらに、ご遺族の方々の消えることのない悲しみを、あらためて心に深く刻みます。
 悲惨な大戦の経験から、国際社会では「戦争」を違法行為と規定し、過ちを繰り返さないための営みを続けてきました。しかし、72年もの歳月が経過した今もなお、「今私たちが暮らす社会は平和である」と言い切ることはできません。
「戦争」を否定しながらも国際社会では、お互いの正当性を主張しあい、各地で「争い」が起きています。また、テロリズムという暴力の頻発によって、どこにいても常に不安や恐怖を感じる生活を強いられています。


 さて、今の私たちの暮らしは、とても便利で快適ですが、誰もが幸せな生活をおくれているといえるでしょうか。環境省の発表によれば、日本で1年間に廃棄される食品は約2700万トンにのぼり、その中、本来食べられるにもかかわらず廃棄されている食品は年間約620万トンにもなると報告されています。他方、国際社会には極度の貧困に苦しみ、日々の食事さえ確保できない人びとがいます。日本にも、最低限の衣食住を満たすだけで精一杯の生活をされている方々、いわゆる相対的貧困の方々が多数おられます。しかも、7人に1人の子どもが「見えない貧困」の状態にあるという指摘もあります。大量に生産し、大量に消費し、華やかに生活している背後に、経済格差・社会的な不平等、少数者への差別などの課題が隠されているのです。こうした国内外の課題を解決しなければ、本当に「平和」な国際社会は実現できません。


 私たちの自覚されていない愚かさ、排他性をもった自己中心的なあり方こそが、社会に不平等を、差別を、孤独を生み出しているのです。「本当の幸せや豊かさとは何なのか」「私たちはどのように生きていくべきか」という問いに向き合うようになってこそ、人びとの苦しみや恐怖、不安がやわらぎ、互いに信頼し、支え合える安穏な世界に向け歩んでいけるようになるのでしょう。
 普段、気づかない自己中心的な在り方をしっかりと見つめ直し、そうした私たちを救わずにはいられないと、常にはたらき続けていてくださる仏さまのお覚りの真実をよりどころとして、少しでも「平和」な社会が構築されるよう歩み続けていかなければなりません。覚りの真実に教え導かれ、自分と他者への執われから、少しずつでも解放されていく時、自他を分け、対立し、利害の衝突に束縛されて、最後まで相争うようなことが起こる筈がないからです。
「自他共に心豊かに生きることのできる社会の実現」に向けて、今年もまた、全国の各寺院から平和の鐘が鳴り響きます。この鐘の響きに込められた平和の願いが、世界中の人びとへ、そして将来を担っていく子どもたちに届いてゆくよう、共に力を合わせてまいりましょう。

2017(平成29)年9月18日
浄土真宗本願寺派
総長 石 上 智 康

平和宣言(英語)PDF

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