地域での活動レポート

石川教区羽水組善正寺 遠く離れても自分を育ててくれた故郷を忘れず

中部2020/12/14
  • 地域活動

 このたび石川教区羽水組善正寺(石川県羽咋市)ご門徒の谷懃(きん)さんが、宗門より「普通褒賞」を授与されました。
 三星正紀住職から「褒賞授与推薦書」が宗務所に届いたのは、2020(令和2)年7月29日。推薦理由は「60年の永きに亘り善正寺門徒として、関西門徒世話人として、関西地方に在住するご門徒をまとめられ、内陣仏具や修復懇志等を続け、寺門の護持発展に尽力され、衆人の範とするところである」というものでありました。
 しかし、その3日後の8月1日に谷懃さんは、ご往生されたのでした。
 褒賞の推薦をされた三星住職が、谷さんについて寄稿してくださいました。

【柳田町に育ち大阪へ】

 柳田町は石川県の羽咋市にあり、能登半島の基部西側に位置します。
 谷懃さんは子どもの時から生活は苦しいですが、お念仏あふれる柳田町の農家の家庭で育たれました。このあたりでは、農家か瓦工場・織物機業場くらいしか仕事がなく、谷さんは3男3女の長男で家族が多いため、農家だけでは生計を維持できず、高校卒業後、大阪に出て兄弟で豆腐屋を始められ、その後、豆腐屋は弟に譲り、10年後には銭湯を始め事業の成功に至ります。
 母親からはいつも「どれだけ生活が豊かになっても朝夕のお参りは欠かさずするように」と育てられ、何事にも「おかげさま」を忘れないように謙虚に生きることを生涯続けて来られました。

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のと千里浜観光ガイドホームページより

【柳和会(りゅうわかい)と報恩講】

 柳田町から大阪(関西)へ出稼ぎに来ていた人々が「柳和会」(関西柳田親和会)を結成されたのは、昭和6年でした。
 柳和会は、所属寺院や門信徒の枠を越えた柳田地区の和の会であり、谷さんが大阪に出られたその当時、柳田町の集落から20軒ほどのご門徒が商売に出ておられ、柳和会に入っておられました。前住職(三星正人氏)が関西に行く人それぞれに本山からのご本尊を与えたご縁もあり、関西のご門徒から前住職に「(在家)報恩講にお参りに来てほしい」と切望され、昭和38年頃から前住職が、そして昭和53年に住職が私に替わっても、現在は8軒になりましたが毎年勤めています。
 谷さんはお忙しいにもかかわらず、関西門徒の自宅を同郷の林幸得さんと二人で手分けして一軒一軒案内され、宿泊もさせてくださいました。その際にも柳田町のことや、寺の行事のことなど、自分を育ててくれた故郷を常に心配されている方でした。

【善正寺のこと】

 善正寺に対しては、寺に向拝が無かったことから、谷さんは柳和会の関西門徒に積極的に呼びかけて寄進をされ、昭和40年に完成しました。また、個人としても内陣仏具や法衣など数多くの寄進をされました。そして京都のご本山と大谷本廟には、一年に一度、家族と一緒に必ずお参りされていました。

【故郷に帰省されて】

 ただ、谷さんは自分には厳しく、毎年お盆に帰省されるも、夜行電車で帰省し、挨拶回りとお墓参り、そして最後にお寺にお参りし、昔の報恩講の話や盆踊りなどの話をされ、最終電車に乗って日帰りで大阪に戻り、次の日には銭湯を開けるというスタンスを生涯変わらず続けられました。
 柳田町には大阪に出てから建てられた家もありますが、住む人は誰もなく、一度も泊まったことはないと思われます。

【谷さんは】

 他に対しては優しく、人に振舞うことは惜しまず、自分に厳しく、質素に歩み、誰にも真似はできない妙好人のような生き方を実践され、8月1日にご往生されました。
 田舎の集落の多くの人が生前お世話になっており、葬儀にお参りしたかったでしょうがコロナ禍でもあり、近い人だけでお参りしました。
 しかし谷さんは、もし新型コロナウイルス感染症が拡大する中でなくても、関西まで葬儀に来てもらうことは望まれなかったように思います。表に出ることを遠慮し、柳和会役員や門徒役員などにはならず、一門徒として仏にかなう生活を実践された一生でありました。
 現在は、息子さんと娘さんで(兵庫県)尼崎市にある銭湯を続けておられます。これからも懃さんの生き方を継いで守っていかれることと思います。


 前住職が出稼ぎに出られる方々に「ご本尊」を渡されたことによって、遠く離れていてもお念仏を通じて繋がっていることの確かさと、念仏相続の日暮らしの大切さが伝わり、現在も柳和会が続いているのだと思います。

※宗門褒賞について

 宗門では、宗門総合振興計画の基本方針「Ⅲ.宗門の基盤づくり」重点項目「6.組織の役割の確認」、事業内容「㉒現行の褒賞制度を見直し、褒める組織づくりをめざして、『褒める・支援する・奨励する』制度を確立する」の取り組みの一環として褒賞制度を奨励しております。

 普通褒賞は、寺院護持への多大なる業績があるとともに、宗門の興隆に寄与され、抜群の方で他の模範と思われるご門徒に対し住職が推薦し授与するものであります。

 詳しくは、浄土真宗本願寺派 寺院活動支援部公開サイト「お寺の情報箱」をご覧ください。

 「お寺の情報箱」( https://johobako.hongwanji.or.jp/ )