仏教語豆事典

以心伝心(いしんでんしん)

 そのうち「以心電信」に? 

 以心伝心という語句は、日常会話の中でも「心から心へ伝わること」という意味でよく使われています。
 しかし、この語句はもともと「不立文字ふりゅうもんじ(経典の文字は熟読すべきであるが、それだけに頼り、すがっては禅の教えは会得えとくできない)・「教外別伝きょうげべつでん(経典に書かれていないものを特別に伝授するのが禅である)と並んで、禅の宗旨をよく表現した有名な仏教語です。
 お釈迦さまの教えは、確かに経典に記されていますが、それだけで、悟りの極意が伝えられるものではなく、お釈迦さまの教えの真髄(しんずい)は、文字や言葉によらないで、師の心から弟子の心へと、じかに伝えられるものであることを意味している語句なのです。
 「心をもって心につたえる」―人間関係も、ここまでくるとりっぱなものですが、今では、もっと軽く「二人は何も言わなくても、ツーカーなんだ」という意味に使われているようです。それともやはりメールですか。

本願寺出版社「くらしの仏教語豆事典」より転載