仏教語豆事典

他生の縁(たしょうのえん)

 単なる偶然ではない出会い

 「袖振そでふり合うもタショウの縁」

 傍線の部分を漢字で書け、という問題が出ました。

 その解答には「多少」が圧倒的に多かったそうです。

 正解は「他生」です。辞書には「多生」というのもありますから、これも正解にしましょう。

 「他生」は、現在の生以外の生を意味しますから、前世か後世のことですし、「多生」は多くの生をいいます。

 人と人との出会いは不思議なものであり、おごそかなものです。

 道ばたで人とすれ違うとき、袖がちょっと触れ合うほどのささいなことも、深い深いご縁があるのだ。だからこそ、出会いのご縁を大切にしようというのです。

 このことわざは、この辺りを、しみじみとした情味のある表現で示しています。

 この「他生の縁」は謡曲や狂言にも登場しますし、「一樹いちじゅかげ一河いちがの流れも他生の縁」という諺もあります。

 人間関係が希薄になった現代とはいえ、「多少の縁」では、ちょっと淋しすぎると思いませんか。

本願寺出版社「くらしの仏教語豆事典」より転載