仏教語豆事典

初心(しょしん)

 入学式や入社式のシーズンになりますと、何となく新鮮で、能楽の世阿弥元清(ぜあみもときよ)の言った「初心忘るべからず」の名句がぴったりの風景が展開されます。

 初心とは、最初の決心・思い立った初めの心という意味ですが、他に、習い初め、未熟とか、世なれない、うぶとかの意味もあるそうです。

 この初心は、もともと、仏教語の「初発心(しょほっしん)」から来た言葉で、初めて悟りを求める心を(おこ)すことをいいます。

 『華厳経(けごんきょう)』に「初発心の時、すなわち正覚(しょうがく)を成ず」とありますが、初めて悟りを求める心を発すとき、正しい悟りへの道は開かれているという意味で、初心はたいへん大切だということを表したものです。世阿弥の名句は、このお経の文句から生まれたといわれています。

 みなさん、初心を忘れていませんか。もう一度思い出してみてくださいね。

本願寺出版社「くらしの仏教語豆事典」より転載