仏教語豆事典

世間(せけん)

「渡る世間に鬼はなし」「世間は広いようで狭い」「世間の口に戸は立てられぬ」「世間様に申し訳が立たない」「世間体を気にする」「世間話に打ち興じる」「世間知らず」「世間並みにしてほしい」...... もうこの辺でやめましょう。とにかく、仏教語の「世間」は、このようにもてはやされています。 仏教では、山とか川とか国土としての世間(器世間)と、そこに住む生命のあるものとしての世間(衆生(しゅじょう) 世間、有情(うじょう)世間)を二種世間といい、さらに、これらを構成する五蘊(ごうん)世間を加えて三種世間とも呼んでいます。つまり、生命のあるもの同士が相依って生活する境界をいった言葉です。 このような境界は、現実の現象世界のことですから俗世間ですが、そこを超越した仏さまの境界は出世間(しゅっせけん)といいます。世に出て立派な地位や身分になることを「出世」といいますが、この出世は出世間を略した言葉です。 あまり世間体ばかり気にしていると、世間を狭くして、出世しませんよ。

本願寺出版社「くらしの仏教語豆事典」より転載