仏教語豆事典

道楽()

「趣味を持たなければ、天才も高等な馬鹿にすぎない」という、フランスの諺(ことわざ)があります。 高齢化社会になると、定年後に長い生活が待っています。そのとき、趣味がなくては、どうして生きていくのか、問題になることでしょう。 いろいろな趣味の通信販売の広告を見ると、趣味の世界も時代とともに変わってきましたね。 昔は、道楽といいました。しかし、こちらは、道楽者とか道楽息子のように放蕩(ほうとう)的な意味合いがあり、品行のよくないニュアンスがあります。 仏教では、道楽は「ドウギョウ」と読み、「仏道を求めようとする願い」が原意でしたが、転じて、「道を解して自ら楽しむこと」、仏道修行によって得た悟りの楽しみを意味し、法悦の境界をいうようになりました。 仏典にも、「今已(すで)に道楽(どうぎょう)を得たり」(『阿育王経(あいくおうきょう)』)とあります。 道は仏道だけではありませんから、 道楽という語も、広く用いられるようになったのでしょう。

本願寺出版社「くらしの仏教語豆事典」より転載