仏教語豆事典

方便()

「うそも方便」という諺(ことわざ)があります。本来、うそは悪いことではあるが、物事をうまく運ぶためには必要な場合もある、という意味です。ですから、方便とは、目的のために利用される一時的な手段とでもいうことになりましょうか。 方便とは、もともと、サンスクリット語「ウパーヤ」の訳で、「近づく」「到達する」という意味です。ある目的を達成するために設けられた巧みな手だてのことで、仏教では主として悟りへ導くための行いをいいます。 仏や菩薩が、衆生(しゅじょう)を救うために、相手に応じて、教理を無理に押しつけることなく、巧な手段を用いることで、『法華経(ほけきょう)』の方便品(ぼん)は有名です。 どうしても救いたいとの仏さまの心から出た手だてを指しているのです。 方便をうそのことだと思うのは早計ですよ。

本願寺出版社「くらしの仏教語豆事典」より転載