仏教語豆事典

用心()

「マッチ一本、火事のもと、火の用心」 寒風に拍子木の音が響きます。 用心は、文字通り、心を用いること、万一に備えること意味する日常語です。「あの人は用心深い人だ」などといいます。 盗賊の侵入などに備えて用意しておく「用心棒」、万一に備えて準備しておく「用心金」、さらに、火災などのときに家財などを入れて運ぶのに用いる大きなかごを「用心駕籠(かご)」といいました。 仏教では、いつでもどこでもだれもが、綿密な心くばりを求められ、用心することが仏道修行の基本姿勢と考えられています。 道元禅師(どうげんぜんじ)には『学道用心集』があり、参禅者の心得を、法然聖人(ほうねんしょうにん)には『往生浄土用心』があり、念仏行者の用心を教えています。 用心はまた、「常存正念(じょうぞんしょうねん)」とも訳されます。仏教では、単に心をつかうだけでなく、平素常に正しく心をはたらかせていることを用心というのです。 それが一般的な注意という意味になりました。 「火の用心」というからには平素から心がけてほしいものです。

本願寺出版社「くらしの仏教語豆事典」より転載