仏教語豆事典

老婆心()

「老婆心ながら」とことわって、一言つけ加えたり、忠告したりする場面に出くわすことがよくあります。言わずもがなでしょうが、とか、おせっかいとは思いますが、という意味なのでしょう。 老婆心とは、「老婆心切」とか「親切心」とかいって、禅宗ではよく使われる言葉で、老婆が子どもや孫を愛撫し、いつくしむように、師匠が修行者に対して、あたたかく導くこと。その心が深く厚いことを意味する仏教語でした。 それが、度を越して、必要以上に世話をやこうとする気持ちを表す言葉となったようです。 『仏教故事名言辞典』に「人に親切・自分に辛切・法に深切」という名言が載っていました。臨済宗の山本玄峰 (げんぽう)師が提唱した「三つのしんせつ」です。他人には思いやりをもって接し、自分には厳しく、法には深く従う態度を教えたものといわれています。

本願寺出版社「くらしの仏教語豆事典」より転載