首相の靖国神社参拝に対する抗議
2002(平成14)年4月22日
内閣総理大臣
小泉 純一郎 様
浄土真宗本願寺派
総長 武野 以徳
首相の靖国神社参拝に対する抗議
昨4月21日、小泉首相が靖国神社に参拝されたとの報に接しました。いかなる理由で参拝されたとしても、首相の参拝は、信教の自由を保障した憲法に反する行為であり、私たちの平和への願いを踏みにじるものとして到底許されるものではありません。
今回の参拝は、靖国神社の春季例大祭にあわせたものであり、終戦記念日の参拝とは性格を異にすると首相自ら説明しておられますが、公人としての首相の参拝であり、いかなる時期でも、いかなる方法でも信教の自由に反するものであります。
そもそも靖国神社は、軍国主義を推進する政府のもとで、戦争に携わり亡くなられた方を英霊としてまつりあげるため、政治的に創設されたものであります。その靖国神社に参拝するということは、戦争を美化し、いのちの尊厳を全く無視する戦争という大きな過ちを肯定し正当化するものであると、私たちは考えます。
私たちの教団においても、宗祖親鸞聖人の教えに背き、仏法の名のもと、教団挙げて戦時体制に邁進してきたという過ちを犯してきた歴史をもっています。私たちはそのことを深く懺悔すると共に、重ねて「非戦・平和」の仏の願いに生きることを決意し、いのちと人間の尊厳を訴え、一人ひとりが大切にされる御同朋の社会の実現をめざして取り組んでまいりました。非戦・平和の真の実現を強く願う私たちは、首相の今回の参拝を、見過ごすわけにはまいりません。
恒久平和の願いが込められた憲法を採択している私たち国民を代表し、その憲法を最も遵守すべき立場にある首相の今回の靖国神社参拝に対して、私たちは、改めて強く抗議すると共に、全ての人びとが、人種・民族・国籍や宗教・思想・信条の違いを越えて、平和への決意を新たにすることができる施設において、首相が公式に自らの平和への決意を明らかにされることを改めて要請いたします。
以 上