岐阜教区岐厚組善超寺 ベビーズサンガ

◆赤ちゃん連れのお母さんがひと息つける場所
「ベビーズサンガ」は月に1、2回、お寺で赤ちゃんとふれあったりお母さんの息抜きができればと、同世代の子どもを持つ寺族夫婦が取り組み始めた赤ちゃんとお母さんのための居場所です。
赤ちゃん連れでなかなか外食できないお母さんたちにもゆっくりしていってもらえるように、ちょっとしたお菓子とノンカフェィンのコーヒーやお茶を無料で用意しています。お菓子は門徒さんから寄進されたもの、ご法事でいただいたものを提供し、お茶はセルフサービスでお願いしています。
「本堂に入って最初にお参りをしたら後は自由に過ごしてください」というスタイルです。本堂には子どもが遊べるようにクレヨンや折り紙等を用意し、また境内で遊べるように、スコップやジョーロ、バケツなどを置いています。お寺そのものを楽しんでもらえるように、遊び道具は本堂や境内で遊ぶきっかけになるようなものをなるべく選び、最小限の数にしています。
「ねんね」や「はいはい」の赤ちゃんのお母さんは、畳の上に赤ちゃんを寝転ばせてゆっくりお話をされていることが多いです。フローリングの床では滑ってしまう赤ちゃんも、畳だと「はいはい」の練習にもなります。「たっち」の赤ちゃんのお母さんは、本堂で遊ばせたり、境内で遊ぶ姿を縁から眺めたりしながらお友達のお母さんとお話しておられます。
基本的に「イベント」はあえてしないようにしています。お寺の行事を考えるとき、どうしてもイベントをやりたくなってしまうのですが、ベビーズサンガではなるべく「なにもしない」ことを大切にしています。ただお寺という空間があるだけで十分、イベントがないからこそ、お母さんと赤ちゃんの「日常」の中に、お寺を組み込んでもらえていると感じます。
とはいえ、「ベビーズサンガ」にご門徒さんはもちろん、近くに住んでいる方ならどなたでも参加いただきたいので、今までお寺に来たことのない方への「きっかけ」としてのイベントは必要だと思い、赤ちゃんの足形や写真で手作りのアルバムを作る「アルバムカフェ」をしました。
また、「わらべうたベビーマッサージ教室」(生後2カ月から1歳前後が対象)も行っています。若坊守がインストラクターの資格を取得し、通常のベビーズサンガとは異なる日に不定期で開催しています。ほかにも婦人会主催の初参式でも参拝者にベビーズサンガをご案内しています。
◆お寺の存在価値を求めて
ベビーズサンガを開催しようと考えた目的は、大きく分けて3つあります。
1つめは、「つながりのあるキッズサンガを」と考えたことです。従来から子どもたちを対象に、初参式・入学法要など節目の参拝を実施してきました。それはとても意義のあることで、お寺へのご縁になっていますが、もうすこし連続性があるといいなと感じるようになってきました。日曜学校があれば良いのですが、法務を考えると実施することが難しいので、単発のキッズサンガを季節毎に実施していき、一年の流れができればと考えました。同時に、主に小学生が対象のキッズサンガを卒業した後、そして、キッズサンガに入る前にも連続性があることが必要だと感じるようになりました。そこで赤ちゃんとのご縁としてベビーズサンガを開催し、その後のキッズサンガの入口になっていけばと願っています。
2つめは若い親へのアプローチです。キッズサンガは、子どもだけで親が一緒に参加することが少ない傾向にあります。一方、ベビーズサンガは必ずお母さんが一緒なので、お母さん方にお寺がどんなところか、浄土真宗がどういう宗教なのか直接アプローチをするという意図です。
私たちの地域は中核都市の中心部(ドーナツ化現象が起きている地域)と周辺部(過疎に悩む地域)の中間(市街化区域)に位置しています。田んぼや畑がどんどんなくなり、新しい家が建つようになりました。古くから住んでいる方(お年寄りや三世代同居の方が多い)と新しく住み始めた方(若い世代で、小さな子どもを持つ核家族が多い)が混在しています。
現在は子どもが増えていますが、ほとんどが核家族であるため、将来は子どもの数も人口も頭打ちになるはずです。それがほんの30年後ぐらいにやってくることになり、その時点で老年期に入るのが今のお母さんたちです(その頃、日本全体では、死者数が増加から減少に転ずると予想されているそうです)。
そういったことも見越して、若いお母さんへ浄土真宗を伝えたり、お寺というものを知っておいていただけたりするきっかけにしたい、というのが2つ目の目的です。
3つめは、現在の門徒さんへのアプローチです。当山のご門徒さんは、何代にもわたって護持してきてくださった家の方がほとんどで、お寺に対しては比較的熱心な方が多くいらっしゃいます。
一方で、お寺をよく言えば格式ある場所、悪く言えば近寄りがたい場所に感じておられる傾向があります。そのようなご門徒さんに、ベビーズサンガへのボランティアをお願いし、気軽に、そして楽しみにお寺に来ていただける機会にもなればと考えています。
このように、赤ちゃんにはキッズサンガへつながる入口となり、お母さんには浄土真宗をお伝えする場となり、ご門徒さんへは気軽にお寺に来ていただける機会になれば、というのがベビーズサンガの目的です。
◆お寺で過ごすことが、お寺への興味につながる
「ベビーズサンガ」は予想以上に良い雰囲気で、参加者の方もとても喜んでくださっています。一度参加された方のリピート率が高いのもありがたいことです。なかでも若いお母さんがお寺に興味を持ってくださったことが一番の成果と思います。
例えば、お参りの作法を聞かれたり、お稚児さんに興味を持たれたり、ベビーズサンガ以外のお寺の行事に参加してくださったりと、仏事の入口となる場所になっています。「門徒になるにはどうしたらよいの?」と聞いてくださる方も出てきました。
毎回、最初に必ずご本尊にお参りしていただくのですが、そのお参りが習慣化してきて、今はこちらが何も言わなくても、お念珠を持ってきてお参りしていかれますので、それもうれしく感じています。また、お寺が赤ちゃんとのご縁をとても重要だと考えているということをお母さんたちや門徒さん方は新鮮に、また好意的に感じてくださっているようです。
残念ながら、ボランティアでお手伝いしてくださる方はなかなかいらっしゃいませんが、「昔、お菓子作りの先生をしていたから...」とベビーズサンガに手作りのお菓子を寄進してくださる方がいました。また月参りの時にベビーズサンガの話題がでることもあります。
◆みなさんに知っていただくことが大変
若いお母さん方は、もともとお寺にあまりご縁のなかった方(ご門徒さんも含めて)が多く、いきなりお寺でお茶を飲みましょうといっても来ていただくには抵抗があるようです。チラシをポスティングしたり、地域の公民館に置いていただいたり、若坊守が地域の集まりに出て直接配布したりしました。幸い口コミできてくださる方もいらっしゃって、今は毎回平均して5~6組、多いときでは10組を超える方がご参加くださいます。
ただ、メンバーが固定してきているため、雰囲気は良いのですが、新規の参加者を集めるのに苦労しています。また、次のステップ(例えば法要・ご法話のお聴聞の機会)をつくることもできていません。参加者の皆さんは、ようやくお寺への抵抗がなくなってきたようなので、あまり焦らず少しずつ進めていきたいと思います。
ベビーズサンガからキッズサンガへの連続性については、これから結果が出てくるかと思います。それを期待して、ベビーズサンガとキッズサンガの合同行事(花まつりなど)を実施したりしています。
お母さんたちから、さまざまな感想をお聞きしています。「畳があるから赤ちゃんにとっては、ハイハイがたくさんできて良い」「本堂が心地良い、特に夏場にはクーラーとは違う涼しさが通り抜ける」「雨の日は広い本堂で遊ばせられるからありがたい」「境内は安全で安心できる」「時間内出入り自由なので、子どもの機嫌や都合に合わせて遊びに来られて良い」などなど、お母さんと赤ちゃんがお寺という新たな居場所を持っていただけたことをうれしく思っています。
ベビーズサンガのちらし


山門に立看板でご案内


イベントはあえてせずに、おしゃべりしたりお茶を飲んだりしてゆったり過ごしています


わらべうたベビーマッサージの様子