統合企画室 シンポジウム『ご縁』 仏教の可能性―震災後の日本と仏教

◆東日本大震災七回忌を機縁に
多くの犠牲と被害をもたらした東日本大震災から、七回忌を迎えました。統合企画室では2017(平成29)年3月4日(土)に築地本願寺にて、「仏教の可能性―震災後の日本と仏教」をテーマとした、シンポジウム『ご縁』を開催しました。
いまだ復興には遠い中、2016(平成28)年4月には熊本地震など多くの災害被害が発生しています。現代には災害だけでなく、平和問題、環境問題、経済格差、自死、いじめなど社会的な課題が山積しています。そうした社会の課題や不安に対して、仏教の精神に基づき何ができるか、東北大学教授の鈴木岩弓さん、臨済宗妙心寺派福聚寺住職の玄侑宗久さん、元経済産業省職員の古賀茂明さん、本願寺派如来寺住職の釈徹宗さんを迎え、学びを深めました。コーディネーターは浄土真宗本願寺派総合研究所、丘山願海所長がつとめました。
◆宗教者に求められること
シンポジウム『ご縁』は3つのテーマに沿って提言をもらい、提言後に丘山所長を交えて討議をしました。
Session1の「仏教と災害」のテーマでは、鈴木さんが東北大学で臨床宗教師養成講座を立ち上げた経緯などを交えながら、被災者への宗教的心のケアの重要性と、震災が起こった際は宗教者ならではの支援があると話しました。玄侑さんは鴨長明が800年前に災害をテーマに書いた『方丈記』などを例に、人間の想定を超える自然の力について言及しました。
Session2の「震災後に見えてきた日本のあり方」のテーマでは、古賀さんは東日本大震災から6年が経ち、原発問題、政治、現代社会が抱える問題について独自の視点で分析しました。さらに「宗教者は影響力を持っているからこそじっとしないで欲しい」と社会における宗教者の必要性を訴えました。釈さんは奨学金の返済や長時間労働に苦しむ若者などの姿から、震災後に重要視され始めた公平性について述べ、「私たちはより良いフェア(公平)な社会を構築しなければならない」と結びました。
Session3「震災後の日本と仏教の可能性」では、今までのテーマを踏まえた上で全体討議を行いました。丘山所長は最後に「本日は僧侶、宗教学の先生、そして宗教とは直接関わりなく活躍されている先生にもお越しいただきました。今回のシンポジウムは、宗派や立場を超えて、現代社会の問題に一緒に向き合いたい、行動していきたいという思いで企画しました。先生方のお話を聞き、さまざまな問題に取り組みたいという実感が湧き、非常に有意義でした」と締めくくりました。
社会の課題に対して、宗教者がいかに発言し、行動していくかが具体的に提示された今回、全国各地から550人の方々が集まり、来場者からは「また開催してほしい」「各先生方の各分野の話を聞けて良かった」など、うれしい感想も寄せられました。
討議の様子
玄侑さん・鈴木さん
釈さん・古賀さん