安芸教区安芸南組西方寺 人と人がつながりあう「念珠の会」

◆西方寺「念珠の会」
広島県呉市にある西方寺では、同寺が運営する西方寺幼稚園に子どもを通わせる保護者を対象に、「念珠の会」という集いを月一回開催しています。2004(平成16)年から始まったこの取り組みは、毎回5~6人の参加があり、育児中の母親同士が、子どもを育てていく過程で生じる悩みを互いに打ち明け、共感する場となっています。
猪野依子住職は、もともと西方寺幼稚園で教員をしていました。教員として子どもと接する中で、毎日悩みにぶつかったそうです。住職は「保護者の方々にも、同じようにいろいろな悩みがあるはず。子どもたちは毎日仏参し、親鸞様に手を合わせ、食事も合掌してから食べているのに、保護者が仏様の前に座ってもらう機会がない。保護者が仏様の前で、ゆっくりと悩みを打ち明ける場所をつくりたい」と保護者のための集いを始めました。そしてその集いは、人と人、人と仏様がつながり合える場所という意味で「念珠の会」と名付けられました。園児の保護者が主な対象ではありますが、誰でも自由に参加できます。
◆悩みを共有する
「念珠の会」の開催当日は、参加者が本堂に集まり「十二礼」のお勤めをして、一人ずつ焼香します。お勤めの後には猪野住職が、これまで仏教に縁がなかった人にも分かりやすい法話や、要望がある場合は仏事についての解説もします。そして、車座に座り直し「座談会」が始まります。まずは2分間目を閉じ、静かに自分と向き合った後、順番に自分の思いを打ち明けます。
座談会にはテーマを設定しておらず、お茶を飲みながら、子どもや子育てのことを自由に話します。住職自身も現在育児の真最中。参加者の気持ちは、自分と重なるものばかりだそうです。「子どもの良いところをほめるのではなく、悪いところばかり叱ってしまう」「兄弟を平等に接してあげることができない時がある」といった繊細な悩みから、「ゲームは何歳からさせていいのか」「おじいちゃんやおばあちゃんが子どもに甘すぎる」という具体的な悩みなど、思い思いに心を開きます。子育ての悩みは多種多様です。悩みを打ち明けたからといって、その場で明確な答えが出るわけではありません。しかし、参加者は、同じような悩みを共感してくれる仲間がいることに心がほっとするそうです。
◆仏法に触れるご縁として
「念珠の会」は、ただ悩みを言い合うのではなく、お勤めや法座を通し、阿弥陀様のお心を聴聞しながら育児についての悩みを共有する場でもあります。また、卒園児の保護者を対象に、夏休みの育児疲れを癒す場として「すずむし法話会」という法座も開いています。これらの取り組みを通し、お寺とご縁のなかった人とも交流でき、参加者は「やさしく法話を聞かせてくれるので、お寺が身近に感じられるようになった」と笑顔で話します。
「ここでご縁を持った人が、今後何かの時にお寺にお参りしてくれるようになるかもしれない。仏法が広がるきっかけとなってほしい」と、猪野住職は「念珠の会」を通してさらにご縁が広がるよう願っています。