地域での活動レポート

浄土真宗本願寺派総合研究所・所務部統合企画室 戦後70年シンポジウム 「宗教と平和-中東とチベットの現実から問う平和への道-」

関東・甲信越2015/08/10
  • 宗派活動

◆戦後70年をむかえて

 浄土真宗本願寺派総合研究所では「2015(平成27)年度宗務の基本方針」に基づき、「宗門として取り組むべき諸課題の学び」として、非戦平和をテーマとしたシンポジウムを、7月25日(土)、築地本願寺本堂を会場として開催しました。
 浄土真宗本願寺派では、戦後70年を迎える今年、7月~9月にかけて様々な非戦平和に関する企画が開催されます。今回のシンポジウムでは特に宗教と平和の問題を取り上げ、中東とチベット・ネパールにおける問題について専門家の方々から提言をいただき、議論されました。

◆宗教と平和

 シンポジウム開会に先立ち、4月25日に発生したネパール地震の現状についてカトマンズ本願寺に所属する僧侶 ウマ・ラマ・ギシンさんより報告がありました。カトマンズ本願寺では郊外の村にある学校の立て直しに力を注いでいることや、「本願寺」と言うと「外国の宗教が勧誘のため活動をしている」との見方をされたりすることなど、活動にさまざまな困難があることが報告されました。
 シンポジウムでは東京外国語大学教授の伊勢崎賢治氏、東京大学准教授の池内恵氏、本願寺派備後教区西楽寺住職の定光大燈氏の三氏より提言がありました。
 伊勢崎氏は防衛相・幹部学校の教授という立場から、平和安全法について「国連平和維持活動(PKO)」「非国連総括型(有志連合)」「周辺事態」の3つの項目を「自衛隊をどう使用するか」という観点で説明されました。
 イスラーム政治思想が専門の池内氏は、まずイスラームの人々の思想的な背景を説明されました。イスラームでは「コーラン」という絶対的な基準があるため、イスラーム教が物理的な法則のように受け入れられており、宗教と政治も切り離せるものではないと説明されました。IS(イスラム国)などは「ウンマ」(宗教政治共同体)の中で繋がった現象であると分析されました。
 DIC(チベット難民を支援している組織)事務局である定光住職は、ネパール在住のチベット難民の背景と現状を報告し、また難民が通う学校で収取したアンケートの結果について説明されました。チベットの方は争いを好まず、非戦の心をもっており、浄土真宗の私たちと同じ仏教として相互理解をしていくことが可能であると結ばれました。
 最後に丘山願海 浄土真宗本願寺派総合研究所長より、「仏教が非戦平和に関して果たすべき役割があり、それは一国だけが強くなることではなく、一切衆生・世界中すべての国や人が平和になることである。争いは人間の愚かな部分であり、それを超えていくことは難しいが、あきらめてはいけない。武器なき世界の実現は非常に困難であるが、そこに向かうための努力をすることが人間の価値である。仏教者として希望を捨てずに努力をしていきたい」と挨拶をしました。
 会場には300人の参加者が訪れました。限られた時間の中では、十分な議論が出来ませんでしたが、難しい課題であるということを再認識し、非戦平和への問いかけのひとつとしていただければ幸いです。浄土真宗本願寺派では、今後もさまざまな非戦平和に関する取り組みを行ってまいります。

jissen_289.jpg

ウマ・ラマ・ギシンさんからのネパール地震の現状報告

jissen_291.jpg

丘山所長より挨拶