地域での活動レポート

大阪西本願寺常照園「卒園生に聞く『園の存在』」

近畿2021/08/26
  • 地域活動

 「子どもたちの笑顔のために募金」は、浄土真宗本願寺派全国児童養護施設連絡協議会(堀浄信会長)の加盟園の子どもたちにも支援金を届けています。児童養護施設は、さまざまな事情により、家庭で生活することができない2歳からおおむね18歳の子どもたちの家庭にかわる生活の場です。社会の一員として自立できるように、子どもたちの成長を支援しています。同協議会に加盟する大阪府吹田市・大阪西本願寺常照園(小川健二郎園長)を訪ね、卒園生に「振り返って思う園の存在」について聞きました。

大阪西本願寺常照園

 常照園には現在、2歳から18歳までの約60人が暮らしています。3階建ての大規模園舎には3~4人用の男女別の居室があり、食事や浴室、トイレは共同となっています。園の1日は、各自で起床し、食堂で順次朝食を取り、幼稚園、小・中・高校へそれぞれ登園、登校。帰宅後は園庭で遊んだりして過ごし、夕食はそろって食べます。その後、学習や入浴を済ませて就寝です。

 職員は、保育士や児童指導員、管理栄養士、看護師、調理師、臨床心理士など45人。子どもたちが、起床から就寝まで生活リズムをつかんで過ごせるように親のように接してサポートします。そして、それぞれの子どもが抱える状況を把握しながら、時には相談相手となり、その成長を支えます。

◆「私にとってもう一つの帰る場所」

 昨年3月に卒園した喜久川真句さん(19)は、小学5年から高校3年までの8年間を常照園で過ごしました。

 家庭の事情で入所した当時のことを思い出し、「入ってからの5年ほどは、部屋にも学校にもどこにも居場所がなかった。園の子どもみんなそうだったように思う。さまざまな事情を抱え、思春期の不安定もあり、ささいなことでのトラブルに巻き込まれ、陰湿ないじめにあった。周りに人はいっぱいいても、私一人取り残されたような感じだった。漠然と『死にたい』と思ったこともあった。仮病を使って学校を休み、だれもいない部屋で一人過ごすこともあった」と語ります。

 そうした喜久川さんを温かく見守ってきた児童指導員は「いつも周りに気を遣う子で、気を遣いすぎて、自分の思いを抑え込み、つらいこともたくさんあったと思う。心を許せるような関係の人が必要だと思い、親とは違う、友達のような距離感で話し相手になっていった。自分で考え、行動できるように育ってほしいという思いだった」と話します。

 喜久川さんは「卒園して、気付かされることばかり。園ではいつも私のことを気にかけてくれていた先生たちに囲まれ、守られていた。それが当たり前と思っていたが、社会に出て、当たり前ではないということがわかった。いいときも、つらいときも、いつも寄り添ってくれた大人がいてくれたことに感謝している。この園は実家以外に、私のもう一つの帰る場所」とほほ笑みます。強い信頼関係に結ばれたその指導員とは、今も連絡を取り合う間柄です。

 喜久川さんは卒園後、親元へは戻らず、大阪市内のグループホームで暮らしています。アミューズメントパークで働き1年以上が過ぎ、「一人で暮らし、働くということがどんなに大変かが身にしみた。園では、お小遣いをもらい好きなように使っていたが、今はお金の大切さにも気付かされた。卒園時にいただいた(笑顔募金からの)支援金は、全国のいろんな人の思いが込められている。大切に使いたい」と話します。

 常照園では、子どもたちの自立の難しさを知るがゆえに、卒園後、孤立や孤独にならないようにと、弁護士や不動産業者、地域住民と連携して自立生活を支える仕組みを作っています。小川園長は「卒園後も、安心して生活できるよう支えていきたい」と語ります。

 また、令和5年秋の完成を目指し、園舎の建て替えを進めています。大規模園舎から複数の小規模園舎に移行するためです。小川園長は「少しでも家庭的な雰囲気の中で生活してもらいたい。社会に出ても人とのかかわりを持てるよう、大人に心を開いてもらえるようサポートしていきたい」と話します。

同園の支援に関する問い合わせは、TEL:06-6384-0867

※『本願寺新報』(2021年8月10日号)に同内容を掲載しています。