地域での活動レポート

「お寺フェスin龍見寺‐お寺を地域活性化の場所へ 住職不在の取り組み‐」<備後教区 御調西組 龍見寺>

中国・四国2021/10/13
  • 寺おこし事業

龍見寺の歴史

 備後教区御調西組龍見寺(小島照行住職代務)は、広島県三原市久井町坂井原地区に位置し、もともと臨済宗佛通寺派として開基されました。その後、今から200年ほど前、江戸時代に聞法の道場として、現在の浄土真宗に改宗されています。龍見寺は、もともと門徒数は少なかったのですが、教化活動が盛んに行われ、特に、2020(令和2)年に結成100周年を迎えた龍見寺湧池山仏教婦人会の活動は今もなお寺院の支えとなっています。

 前住職は兼職しながら門徒とともにお寺を護持されてきましたが、病床に臥して以降は住職不在の状態となり、門徒・地域住民のなかでも解散も止むなしという話し合いが進められていました。しかし、仏婦活動が盛んなお寺であること、地域のお寺として法座を残していきたい等、やはり何とかお寺を護っていきたいという門徒及び地域住民の思いが強まり、住職代務が就任され今に至っています。

寺フェスのはじまり

 -龍見寺で何かイベントをやってみたい-地域活性化グループ "坂井原元気プラン2グループ" の一員であった龍見寺仏婦の中曽年世さんたちの一声で企画が動き出したのが、2017(平成29)年のことです。同団体の一員であったギークハウス広島(※1)の篠崎初光さんを中心に寺フェス開催に向けた準備がスタートしました。

 篠崎さんや中重幸治さん(地域活性化のメンバー)に、マルシェや音楽会開催のノウハウが多少なりともあったこともあり、地域の力で地域の人たちと取り組む企画として提案しました。

 最初は「そんなことができるのか」と懐疑的な方もいましたが、企画が固まっていくにつれ、それぞれ特技を持つ地域の方の中からスタッフとして協力が増えていきました。このようなイベントだと、スタッフがほぼ女性だけとなりがちでありますが、男性の協力が多く得られ、より良く取り組めたと篠崎さんはお話になりました。

開催への流れ

 中曽さんや篠崎さんなど活性化グループメンバーを中心に、開催に向けた実行委員会を編成(メンバーは坂井原地区内地域総代、自治区区長、副区長、龍見寺総代、同寺副総代、仏教婦人会会長、副会長、坂井原元気プラン代表者数名、寺フェス主催グループ数名、小島住職代務など)し、趣旨及び実施計画を話し合い決定したうえ、出店やジャズ出演の交渉、近隣駐車場の確保、関係各所への届け出(保健所・消防署・警察署)や、行政への後援を依頼しました。

 広報として、配布用のチラシを作成し、積極的に報道関係者へ取材の依頼も行い、地元ケーブルテレビへも出演しました。

 チラシ作成費や出演者への謝礼、イベント保険料など最低限の経費は必要でしたが、設営テントやトランシーバー、駐車場での誘導棒など備品は自治体所有のものを借用し、音響については、音響関係の仕事をしていた方が地域におられ、手持ちの機器を用意しました。また、飲食用長椅子などは地域の方々が持ちより用意しました。

お寺deマルシェin龍見寺

 そして迎えた寺フェス当日、お寺の荘厳な空間のなかでジャズの演奏、境内には飲食から小物販売など、地域の方の出展も含め数多くのブースが並び大変な賑わいを見せ、参加した方々からは、
 「お寺でジャズを聴けるなんて雰囲気が最高」
 「田舎のお寺にこんなに多くの人が集まってびっくり!」
 「1日中時間を忘れて楽しめた」
 「普段会えない人に会うことができてよかった」
 「お寺は人が集まる場所であることを実感した」
などの反響があり、次回開催を期待する声もありました。

 お寺を護っていきたいという仏教婦人会の思い、地域を盛り上げていきたいという地域活性化グループの思いが上手くリンクした活動となりました。実現した寺フェス第1回目となる2018(平成30)年は200人が参加され、翌年の第2回は、SNSで第1回目の様子を紹介していたこともあり、イベント参加団体も増え、大盛況の中、400人近くの方が遠近各地より来場しました。

寺院のこれから

 これから先、人口が減少するなかで、過疎地においても今以上に厳しい時代となることは間違いなく、お寺と門信徒・地域とがどうすれば密接な関係を築いていけるかが重要な課題です。

 そのような中、小島住職代務は、寺フェスを通して、「住職不在であるがゆえに、門信徒の方や地域の方々が『私たちのお寺』という強い思いをもって積極的にお寺を支えてくださっている」と話します。また、篠崎さんからは、「お寺からダメだと言われることがないことがありがたかった」と開催にあたり、小島住職代務がまかせてくれたからこそと話します。運営に携わっている門徒総代や婦人会の方からは、「龍見寺のアピールになっており、楽しく参画している」ことを伺いました。

 お寺という開かれた場所に人が集うことで、 門信徒や地域にある潜在的な力の掘り起こしにつながり、お寺を次代へつないでいくひとつの方策となりうるお話をお伺いしました。

「お寺フェスin龍見寺」は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、2020(令和2)年及び2021(令和3)年は開催を見合わしましたが、2022(令和4)年は開催をめざしたいと検討されています。

(註)※1 
 ギークハウスとは、ギーク(パソコンやITが好きな方々)の集まるシェアハウス。ギークハウス広島は「いなか×ギークハウス」をテーマに坂井原地区にて運営されており、いなか暮らしに憧れる方が、その良い部分だけでなく現実的な部分も知る場所でもある。現在は、音楽会やフリーマーケットの開催など、地域活性化を目指しITを活用した情報発信や、地域おこしイベントの企画運営等に携わっている。

告知チラシ

開催時の風景

会場図