地域での活動レポート

東京教区鎌倉組永勝寺 高校3年生僧侶がフードバンク

関東・甲信越2022/10/07
  • Dāna for World Peace

◆神奈川・永勝寺 ひとり親世帯に食料支援

 神奈川県藤沢市の永勝寺で2022年7月17日、武田裕元住職の長男で高校3年生の正乗(まさのり)さんが中心となり、生活困窮者らに食料品や生活用品を無料配布する「フードバンク@永勝寺」を開きました。

 高校1年生の時に僧侶となった正乗さんは「みんなが笑顔になれるお寺に」という両親らの願いを実践しようと、貧困問題に積極的に取り組んでいます。

 正乗さんは高校1年生の7月、得度して僧侶となりました。その研修の中で、宗門内の寺院が「子ども食堂」やフードバンクなど生活困窮者の支援活動を行っていることを知り、「人びとの悩みや苦しみに寄り添える僧侶になりたい」と誓ったといいます。

 在籍する玉川学園高等部(東京都町田市)では、生徒それぞれが自ら決めたテーマを研究し、認識を深める探求型学習「自由研究」が3年間通して行われていますが、正乗さんはそのテーマを「貧困をなくすため僧侶として何ができるか」にしました。

 1年生の時から、地元藤沢市の社会福祉協議会(社協)や子ども食堂、フードバンク運営者に話を聞き、自坊でどんな活動ができるかを模索。3年生となり、自らフードバンクを立ち上げ、僧侶として貧困問題に取り組む上での課題を探求することにしました。

 フードバンク開催に向けて社協に相談し、支援対象の絞り方、開催方法などの助言を受け、「社協からは、『受け付けの際に家族構成を聞くと、必要なものを適切に配布することができる。子どもが多い世帯にはお菓子類を多めに』など、アドバイスをたくさんもらった」と話します。実際に地元で開催されている「フードバンクふじさわ」にボランティアとして参加し、支援物資の仕分けや袋詰め、配布を体験するなどし、「フードバンク@永勝寺」を立ち上げました。対象は、ひとり親世帯とひとり暮らしの大学生にしました。チラシを製作し、社協を通して支援が必要な世帯に配布しました。今回は、事前予約制で最大15世帯までとし、電話とメールで申し込みを受け付け、連絡先と家族構成を聞いていきました。また、「フードバンクふじさわ」が全面的に協力。レトルト食品やティーバッグなどの提供を受けました。準備は、母の智恵子坊守、弟の智也さん、妹の敬子(あつこ)さんも手伝って、お寺のお供え物の菓子や洗剤などを加えて紙袋に詰めていきました。

 フードバンクはひとり親世帯の8人が利用しました。正乗さんは、袋を手渡しする際に言葉を交わしました。生活状況や仕事について話す来訪者や、「また、お寺に遊びに来ていいですか」と言いながら笑顔で帰っていく人もいたといいます。

◆みんなが笑顔になれるお寺に

 今回の活動で正乗さんは、自分にできる貧困問題への取り組み方が少しだが見えてきたといいます。その1つが、生活保護の申請基準よりすこしだけ収入が多く、生活保護が受けられない「制度の間(はざま)」にいる人たちへの支援。今回の来訪者の中にその存在がありました。「市の福祉課や社協の方々に聞くと、制度の間にいる人たちは『助けて』の声が上げにくいという。そういう人たちに寄り添わねばという思いを強くした」と語ります。

 正乗さんは「小さな頃から祖父母や両親に『みんなが笑顔になれるお寺にするのだよ』と言われて育ってきました。来訪者の方々の笑顔がとても印象に残った。経済的な支援だけでなく、人とのつながりや自分の居場所を求めておられるのだなと感じた」と話します。