地域での活動レポート

こどもサポートプロジェクト(山陰教区神門組真宗寺)「日本で暮らす外国の子に居場所を」

中国・四国2022/12/06
  • Dāna for World Peace

 外国人労働者の受け入れが拡大する中、その子どもたちが安心して楽しく暮らしていけるようにと、島根県出雲市の真宗寺住職・堀西雅亮さんはボランティア団体を立ち上げ、地域の人や大学生と一緒に子どもの居場所づくりを進めています。国籍に関係なく、誰もが分け隔てなく、地域で当たり前に過ごせる社会を目指しています。

 出雲市は2022年5月、人口17万4000人のうち、外国籍の人口が過去最多の約5100人となりました。およそ7割が日系ブラジル人で、主に電子部品などを製造する企業に勤務しています。また、フィリピンなど東南アジアの出身者も多いそうです。

 堀西さんがサポートするのは、その子どもたちです。「2014年頃から家族連れの外国人が徐々に増え、それに加えてその子どもも増加し、『日本に長く住んで子どもを育てたい』との思いを持っている。そこからいろんな課題が出てきて、変えていかなければいけないことがたくさん見えてきた」と話します。

 堀西さんは1995年、阪神淡路大震災の起きた後に神戸で日本語教師に就き、ベトナムの技能実習生の受け入れ団体や震災を機に設立された多文化共生センターで外国人と関わってきました。出雲に戻ったのは、2007年、住職を務めていた父が、病気になったためでした。

 すでに、出雲には2000人ほどの外国籍の人たちが暮らしていました。堀西さんは関西での経験を生かし、2010年にNPO法人の立ち上げに加わり、日本語教室を開くなど、さまざまな活動を始めました。2015年度からは、外国籍の親を持つ子どもたちへのサポート事業も展開しています。

◆地元学生らと"教室"開く

 同法人のこの事業が終了すると、堀西さんは2021年3月にボランティア団体「こどもサポートプロジェクト」を新たに立ち上げ、言葉と文化が多様な子どもたちをサポートする活動を始めました。

 月2回、外国籍の子どもが多い小学校2校とコミュニティセンターで"教室"を開いています。子どもたちはそこで、宿題をしたり遊んだり、2時間自由に過ごします。堀西さんは「安心して自分を出せる場が少ない。日本語を話せない子は、日本語のみの環境では自分を出すことができずに苦しい思いをしている。自分の国の言葉で、嫌なことは嫌だと言え、ありのままの自分が出せる場。そんな居場所になれば」と同プロジェクトの願いを話します。

 「ある小学1年生が教室で座っているのが苦しくなり教室を飛び出し、『自分はバカでダメだ。日本に生まれたらよかったのに...』と吐露したと聞き、大変ショックを受けた。来日して間もない頃のしんどさもあるし、長年暮らすと将来のことや進学の悩みが出てくる。自分に自信がなく、悲観して希望を持てずにしんどい気持ちを抱えている子もいる。自分の背景に誇りを持てるまでにはいろんな葛藤がある。社会が子どもたちを認めていくことが大切であり、それが課題」と話します。

 教室のスタッフには、地元の島根大学教育学部の学生が参加しています。「学生にとっても学びの場。さまざまな背景を持つ子どもと接し、そのしんどさを直に感じている。子どもの心の変化を喜び、保護者の喜ぶ姿に感動してくれる学生たちが頼もしい」と話します。

 堀西さんには、忘れられないことがあります。2019年に地元の高校生が多文化共生を目的に、ブラジルやフィリピンなどの人たちと交流会を開いた時のことです。「高校生の企画を好意的に捉えていたが、外国人の若者が私に述べたお礼の言葉に衝撃を受けた。『今日はすごく楽しかった。でもこれが終わるとまた寂しくなる。本当は友達になりたいんだ』と。無意識に日本人と外国人の線引きをしている自分がいた。その線を越えていくのが、多様な人々が互いに個性を認め、一体感を感じる『共生社会』だと強く感じた」と振り返ります。

 堀西さんは、最後に、「『共生社会』づくりは、立場に関係なく、いろんな人がオープンに来てもらえるということが大切。そのために寺院や企業、お店などあらゆる分野、組織が一つ一つのプレーヤーとして変化していけば、よりよい社会が築ける」と力を込めて話しています。



※『本願寺新報』(2022年11月20日号)に同内容を掲載しております。