地域での活動レポート

長野教区河東組普願寺 江戸時代の面番所をカフェに再生

関東・甲信越2024/02/15
  • 寺院活動

◆「みんなが集える場所に」とコーヒー提供

 長野県須坂市の普願寺(業田(なりた)昭映住職)は江戸時代に寺侍の詰所だった境内の建物を古民家風に改装し、無料でコーヒーを振る舞う「寺カフェ馨(けい)」として地域の人や門徒に憩いの場を提供しています。

 入口に吊り下げられた丸太を木槌で叩く「コンコン」の音が"来店"の合図です。業田住職や寺族が出迎え、ジャズが流れる室内へと通されます。衆徒の真行(まさゆき)さんが淹れるこだわりのコーヒーはおいしいと評判で、コーヒーは無料ですが、カフェのお内仏前にさい銭を置いていく人も多いとのことです。

 普願寺はおよそ3,000坪の古刹で、参道と山門が見渡せる場所にはかつて警備の寺侍が詰める「面番所」がありましたが、その役目を終えてからは物置になっていました。「昔は太鼓楼をお茶所にしていたが、それも閉じていた。現代のお茶所として皆さんが気軽に集える場所にと思った」と業田住職は話します。2020年、古い梁や柱を残したまま面番所をカフェスペースに再生しました。「ちょうど新型コロナでご門徒の法事を寺で行うことが多くなった時期で、お斎はないが、おつとめが終わって『はい、さようなら』というのも寂しいので、『カフェにどうぞ』と勧めたら、みなさんここでいろいろ話をして帰られるようになった。新型コロナが5類感染症に移行した後も、法事の後にカフェで過ごす門徒が多い」といいます。


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◆お寺が地域の居場所に

 普願寺仏婦の役員経験者でつくる「いちょうの会」は月2回、寺の清掃奉仕に集まるカフェの"常連"です。中村則子さんは「作業の後、ここで昼食をとりながらおしゃべりをして、家路につくのが定番。会以外でも時々来ている」と話します。牧裟智子さんも「みんなでお寺をきれいにして、楽しくお話しするのが、私の拠りどころ。『またお寺に参りたい』と思わせてくれるような場所」と話します。また、須坂市で臨済宗の座禅道場を開く高津ドロテーさんもファンの1人です。海外からの来訪者を案内して「馨」を訪れることもあり、「ここのコーヒーはおいしくて有名。古い建物がうまくいかされていて居心地がいい。このお寺は観光寺院ではなく、市民のお参りのための寺。本当にちょっと特別」と心を寄せます。

 業田住職は「カフェをきっかけに、これまであまりお参りされなかったご門徒もお寺に来られるようになった。阿弥陀さまに手を合わせていただく時間を大切にしつつ、若者にも受け入れられるお寺として新たな歴史が続いていけば」と話しています。


『本願寺新報』(2024年1月10日号)に同内容の記事を掲載しております。