お寺を通じたインターンシップから農業の道へ 〈備後教区 三次組 東光坊〉
宗派と龍谷大学の連携事業
宗派では2016(平成28)年度から、宗門関係学校である龍谷大学の農学部と連携し、インターンシップ(社会実習)事業を行っています。 現在、過疎地域に所在している浄土真宗本願寺派の寺院が数多くあります。そのような寺院や地域の門信徒の方と共に、各地域の活性化をめざして行われているのがこのインターンシップ事業です。 また、地域に住む人たちはかえって地元の良さを見つけにくいこともあります。インターンシップ事業で訪れた学生が新たな目で地域の魅力を発見し、地域の活性化につながるというのもこの事業の特徴のひとつです。
インターンシップでの農業との出会いから和歌山での農業へ
今回ご紹介する備後教区三次組東光坊(坂原英見住職)でインターンシップを経験した一人が増田恭子さんです。 増田さんは龍谷大学農学部在学中の2018(平成30)年、インターンシップに参加し、広島県三次市作木町に所在する東光坊を通じて作木地区で実際の農業、酪農、漁業、林業にふれました。 増田さんはその後、龍谷大学農学部を卒業し、和歌山県で紀州有田みかんの生産・製造・営業などを行っている企業に就職しました。自然に左右される農業。甘くておいしいみかんが実り、うれしさを感じる反面、天候による自然の厳しさを感じることもあるといいます。彼女が「農業の現場で仕事をやりたい」と思い、農業に関わる仕事を選ぶことになったきっかけの1つが「龍谷大学農学部インターンシップ」だったのです。
北海道から広島そして和歌山へ
インターンシップ実施にあたっては、作木町のさまざまな方が増田さんを受け入れ、親切に協力してくれました。作木町では直前に災害や台風の影響があり、インターンシップの受け入れが非常に難しい状態だったのですが、いざインターンシップが始まると増田さんの人柄や熱意もあり、地域のみなさんが暖かく迎え入れてくれました。増田さんは常に向上の心を持って、感謝の心で作業に取り組んでいました。増田さんの意欲がすべてを変え、受け入れ先の皆さまは、笑顔で終えてくれました。 そのような様子を見た坂原住職は、協力してくれているある農園の方に「なぜ熱心に協力してくれているのですか」と尋ねてみました。すると、その方は「自分は若いころ、北海道の長期インターンシップで学ばせてもらった。北海道の方たちに育てていただいたが、その方たちには恩返しすることができない。だからこそ農業をめざす人に少しでも役に立てたらと思っている」と話したそうです。北海道で受けた恩が広島で増田さんにつながり、現在は和歌山の農園にまで広がっているのです。 お寺を通じてのご縁のひろがりについて、坂原住職は、「増田さんには10日ほどお寺に泊まって農林業、畜産、漁業など、門信徒さまにご協力いただいての体験学習をしてもらった。ある日、増田さんから、はじめて収穫したみかんと手紙が届き、すごくうれしかった。北海道から広島につながった心が和歌山で結実しました。お寺を通じてご縁が広がっていくことは大変ありがたいことです。」と笑顔で話しました。 東光坊では2016年~2019年の4年間にわたってインターンシップ事業を実施していましたが、残念ながら新型コロナウイルス感染症の影響によって休止せざるを得ませんでした。 坂原住職は「その間にも農園業務をやめられた方、代表者が亡くなられた方、ご家族が亡くなられた方もおられ、再開のめどはたっていません。むしろいい時に体験していただいたなあと感じております。でも、心の中で『できれば再開を』と考えております。私も受け入れ先みなさまの気持ちや実習生の姿勢に接したからだと思います。全国の寺院のみなさまにもおすすめしたいと思います。」と語っています。
宗派ではインターンシップにご協力いただけるご寺院を募集しています。詳しくは宗派公式WEBサイト (https://www.hongwanji.or.jp/news/cat4/002238.html)をご覧ください。
※増田さんの日頃の活動については早和果樹園(〒649-0434 和歌山県有田市宮原町新町275-1 ℡0120-043-052)のホームぺージ(https://www.sowakajuen.co.jp)内の「生産部-栽培日記-」(https://www.sowakajuen.co.jp/blog/agriculture/)をご覧ください。
【インターンシップ当時の様子】