御正忌報恩講 ご門主法話(ご親教)
お慈悲の心に気付かされる
2023年に慶讃法要
本年もようこそ御正忌報恩講にご参拝くださいました。全国から親鸞聖人をお慕いする皆さまがご参拝くださり、ご一緒におつとめをし、お念仏申させていただく尊いご縁であります。
さて、本年は、御正忌報恩講の最初の日にあたります1月9日に、「親鸞聖人御誕生八百五十年・立教開宗八百年についての消息」を発布いたしました。4年後の2023年に法要をおつとめいたします。
立教開宗八百年とは、親鸞聖人が浄土真宗のみ教えを説かれて800年ということで、この間、今日まで多くの先人方によってみ教えは受け継がれてきました。それは、時代が変わっても、み教えが私たちが生きていく上での依りどころ、支えとなってきたからです。
親鸞聖人は、私たち人間を自己中心的な凡夫であるとみられ、その凡夫に向けられた阿弥陀さまのおはたらきを明らかにされました。どのように時代や場所が変わろうとも、自己中心的な凡夫であるという私たち人間の姿は変わりません。ですから、いつの時代においても浄土真宗のみ教えが、その時代の人々の生きる依りどころとなるのです。
自己中心的な自身に気付く
ところで先日の新聞に、昨年1年間に日本で交通事故で亡くなった方が統計を取り始めてから最少になったと出ていました。それでも、平均すると毎日約10人の方が交通事故で亡くなっています。しかし、その10人が私ではない、あるいは私の家族ではないという保証はありません。また交通事故だけではなく、病気や事件などによって突然命を失うということも、昔に比べればその数は減っているかも知れませんが、この私がそうならないということにはなりません。
お釈迦さまはこの世界の真実を、諸行無常という言葉で明らかにされました。私たちはこの真実に気付くことなく、自己中心的な考え方で日々の生活を送っていることが多いのではないでしょうか。
親鸞聖人は、そのような私を真実の世界に導きたいという阿弥陀さまの願いと、そのおはたらきを説いてくださいました。み教えを聞かせていただくことで、私たちは自己中心的な自身の姿に気付かされるとともに、摂取不捨という阿弥陀さまの広大なお慈悲の心に気付かされるのです。
今日、特に日本では少子高齢化や核家族化、過疎・過密などの社会状況とも相まって、み教えを伝えていくことが非常に難しくなっていますが、ご参拝の皆さまには今後もみ教えを聞かれますとともに、一人でも多くの方々にみ教えを伝えていただきたいと思います。
そして、4年後の親鸞聖人御誕生八百五十年・立教開宗八百年の慶讃法要をともにお迎えいたしましょう。
本日はようこそご参拝くださいました。
本願寺新報2019(平成31)年 1月20日号掲載