ご消息・ご親教

御正忌報恩講 ご門主法話(ご親教)

ご親教2021/01/15

社会の中で、すべての人々と手を携えて
共に歩む念仏者であるということに
改めて思いを致し、日々を過ごしてまいりましょう

 本年も1月9日よりおつとめしてまいりました御正忌報恩講は、本日、大逮夜をお迎えいたしました。新型コロナウイルス感染症の拡大により、 1月7日に首都圏の1都3県に、 13日には京都を含む7府県が追加され、1都2府8県に緊急事態宣言が出される中での御正忌となりました。

 例年のように多くの皆さまにご出勤ご参拝いただくことができず、関連行事も多くを取りやめることとなりました。感染拡大が続く中で、私たちの命を守るためのやむを得ない決断ですので、ご理解いただきたいと思います。

 世界で最初の新型コロナウイルス感染症による死者が確認されてから1年がたちました。新型コロナウイルス感染症により、お亡くなりになられた国内外のすべての方々に謹んで 哀悼 ( あいとう ) の意を表しますとともに、 罹患 ( りかん ) されている皆さまに心よりお見舞い申しあげます。また、治療・対策にあたられている医師、看護師をはじめとする医療従事者の方々、ライフラインの維持に努めておられる方々に深く敬意と感謝を表します。

 さて、これまで本願寺での報恩講は、全国から多くの僧侶、寺族、門信徒の方にご出勤ご参拝いただき、おつとめしてきました。御影堂の親鸞聖人の 御真影 ( ごしんねい ) 御前 ( おんまえ ) で浄土真宗のみ教えを聞き、ご参拝の皆さまとともに報恩のお念仏を称えるという、まさに私が阿弥陀さまのおはたらきに出 ( ) うことができたことを、いつも以上に味わわせていただく喜びの時間でありました。

 しかし、今年は多くの皆さまとともにそのご縁を持つことができず、特に緊急事態宣言発出後は皆さまに御影堂でゆっくりとご参拝いただくことができなかったことは、誠に 遺憾 ( いかん ) ( ) えません。 諸行無常 ( しょぎょうむじょう ) の世を生きる私たちであることを改めて実感するとともに、親鸞聖人が『 教行信証 ( きょうぎょうしんしょ ) 』に書かれている「ああ、 弘誓 ( ぐぜい ) 強縁 ( ごうえん ) 多生 ( たしょう ) にも ( もうあ ) ひがたく、真実の 浄信 ( じょうしん ) 億劫 ( おくこう ) にも ( ) がたし。たまたま 行信 ( ぎょうしん ) ( ) ば、遠く 宿縁 ( しゅくえん ) を慶べ。もしまたこのたび 疑網 ( ぎもう ) 覆蔽 ( ふへい ) せられば、かへつてまた 曠劫 ( こうごう ) 経歴 ( きょうりゃく ) せん。誠なるかな、 摂取不捨 ( せっしゅふしゃ ) 真言 ( しんごん ) 超世希有 ( ちょうせけう ) 正法 ( しょうぼう ) 聞思 ( もんし ) して 遅慮 ( ちりょ ) することなかれ」 (註釈版聖典132ページ)とのお言葉が深く胸に迫ります。しかし、どのような状況にあっても、これからも阿弥陀さまのおはたらきを聞き、お念仏の中に日々を過ごしてまいりましょう。

 なお、宗派、本願寺、築地本願寺や全国のお寺では、パソコンやスマートフォンを利用してみ教えをお伝えしたり、法要にご参拝していただく取り組みを行っていますので、ご自宅でも浄土真宗に触れていただく機会にしていただき、また、ご縁ある方へもお勧めいただきたいと思います。

 1月8日の「京都府感染拡大警報」では、「感染者の多くが無症状・軽症であることを考えれば、より多くの方が感染していても自覚がなく、通常の日常生活を送ることで知らず知らずのうちに感染を広めている可能性も否定できない状況である。これ以上感染を拡大させず、通常の医療が停止するような事態を招かないためには新規感染者の発生を抑えることが第一であり、府民一人ひとりの行動の 自粛 ( じしゅく ) ・自制を強く要請する」とされ、また、テレビでは医療従事者の方が「医療従事者への最大の支援は、感染しないことです」と語られていました。

 このような状況の中、私たちは一人ではなく、社会の中で、すべての人々と手を携えて共に歩む念仏者であるということに改めて思いを致し、日々を過ごしてまいりましょう。

本願寺新報2021(令和3)年 2月1日号掲載