ご消息・ご親教

本願寺本堂内陣修復完成についての消息

ご消息2021/11/23

 宗祖親鸞聖人が阿弥陀如来のご本願の救いを明らかにされ、浄土真宗を開かれてからすでに800年近くになりました。この間、聖人のみ教えを仰ぎ、お念仏を喜ぶ根本道場として本願寺は建立され、世界各地の僧侶・寺族・門信徒の方々によって今日まで護持されてきました。

 現在の本願寺本堂(阿弥陀堂)は、宝暦10年・1760年の再建から200年余りを経て屋根全般が老朽化したことに伴い、昭和54年・1979年から5年半の歳月を要して、屋根瓦の全面葺替えとそれに伴う修復や防災設備を施す工事を行いました。そして、このたびは平成29年・2017年8月から内陣、余間および三之間の漆塗、金箔、彩色、金具、巻障子、天井画、障壁等の修理、また宮殿の修復を行い、来年3月にすべての工事を完了することになりました。

 これによって私たちは、先人の方々によって建立され伝持されてきた聞法の道場を、また文化財としての貴重な建造物を後世に遺すことができることになります。このような大事業が完遂できますことは、ひとえに仏祖ご照覧のもと、有縁の皆様のご懇念やご協賛、また重要文化財への公的資金の補助によるものであり、まことに有り難く尊いことです。

 省みれば、私たちはものごとを正しく見ることができず自己中心の心に執われて、無常・無我・縁起といった釈尊の教えに背き続ける苦悩の日々を送っています。阿弥陀如来のお慈悲は、そのような私たちを慈しみ、深く悲しんでおられます。如来のおさとりの真実に包まれ、智慧の光に照らし出された私たちは、自身が凡愚の身であると知らされ、お慈悲に救われる喜びと仏恩報謝の思いから、少しでも執われの心を離れなければならないと気づかされ、阿弥陀如来の悲しみを深めないように生きていくのです。これこそが念仏者の生き方といえましょう。

 この生き方に学び、次の世代の方々にご法義がわかりやすく伝わるよう本年4月の立教開宗記念法要において、その肝要を「浄土真宗のみ教え」として述べさせていただきました。来年4月には、阿弥陀堂内陣修復完成奉告法要および慶讃法要がお勤めされます。これからもみ教えに導かれ、我執我欲に迷うわが身を省みるとともに、お慈悲によるこの愚身このままの救いに感謝し、格差や分断が指摘される今日の社会の中にあって、互いに敬い助け合ってお念仏のともの輪を広げてまいりましょう。

 

   令和3年・2021年 11月23日

龍谷門主  釋  専  如