御正忌報恩講 ご門主法話(ご親教)

どのような状況にあっても、
これからも阿弥陀さまのおはたらきを聞き、
お念仏の中に日々を過ごしてまいりましょう
1月9日よりおつとめしてまいりました御正忌報恩講は、本日、大逮夜をお迎えいたしました。
一時は収束に向かうかと思われた新型コロナウイルス感染症の急速な拡大によって、1月9日には広島、山口、沖縄の3県にまん延防止等重点措置が適用される中での御正忌となりました。本年も昨年に続き、多くの皆さまにご出勤、ご参拝いただくことができず、関連行事も多くを取りやめることとなりました。感染拡大が続く中で、私たちの命を守るためのやむを得ない決断であり、ご理解、ご協力をいただきたいと思います。
新型コロナウイルス感染症の世界的流行から2年となります。新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた国内外のすべての方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、罹患されている皆さま、後遺症に苦しんでおられる方々に心よりお見舞い申し上げます。また、治療、対策にあたられている医師・看護師をはじめとする医療従事者の方々、ライフラインの維持につとめておられる方々に深く敬意と感謝を表します。
新型コロナウイルス感染症の流行により、私たちの生活は大きな影響を受けました。先の見通しが立たない状況が続く中で、私たちは不安や悩み、苦しみを抱えています。
仏教の特徴の一つに「諸法無我」という教えがあります。あらゆるものに「我」という不変の実体はないという考え方です。もともと古代インドでは、この「我」の存在を重視してきました。それに対して仏教は、「我」や「霊魂」といった不変の存在を認めません。「諸行無常」というように、あらゆるものは一瞬もとどまることなく変化していると仏教では考えますから、そこに常住不変の実体などあるはずはありません。ですから理想的な見方をすれば、仏道修行をすることによって、自己を変革することができるといえます。
しかしながら、自分を変わることのない実体ととらえ、その自分の都合や利益などにとらわれ、ものごとをありのままに受け入れることのできない、自己中心的な「私」というものに悩まれたのが親鸞聖人でした。阿弥陀さまはこのような私たち凡夫のために、ご本願をたてられ、そのままの姿で救おうとはたらき続けてくださっています。どのような状況にあっても、これからも阿弥陀さまのおはたらきを聞き、お念仏の中に日々を過ごしてまいりましょう。
なお、宗派、本願寺、築地本願寺や全国のお寺では、感染拡大防止策としてパソコンやスマートフォンを利用して、み教えをお伝えしたり、法要にご参拝していただく取り組みを行っていますので、ご自宅でも浄土真宗に触れていただく機会にしていただき、また、ご縁ある方へもお勧めいただきたいと思います。
本日はようこそご参拝くださいました。
本願寺新報2022(令和4)年 2月1日号掲載