全国門徒総追悼法要(秋の法要) ご門主法話(ご親教)
本日は、全国門徒総追悼法要・秋の法要へようこそお参りくださいました。
この法要は、この1年の間にご往生された全国のご門徒の方々を追悼する法要であります。ご往生された方をお偲びし、あらためて浄土真宗のみ教えを聞かせていただくご縁といたしましょう。
まず、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた国内外のすべての方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、罹患されている皆さま、後遺症を患われている皆さまに心よりお見舞い申し上げます。また、医師・看護師をはじめとする医療従事者の方々、ライフラインの維持に努めておられる方々に深く敬意と感謝を表します。
また、ロシア連邦のウクライナ侵攻に対して、私たち念仏者は、『大無量寿経』に説かれる「兵戈無用」、親鸞聖人がお示しくださった「世のなか安穏なれ」のお言葉を、あらためて心に深く刻み、武力による他国の主権の侵害を強く非難するとともに、一刻も早くウクライナに平和が訪れることを願ってやみません。
さて、来年は、親鸞聖人のご誕生から850年、再来年は、浄土真宗のみ教えを体系的にまとめられた『教行信証』の成立から800年という記念の年となります。それにあたって本願寺では、来年3月29日から5月21日までの5期30日間にわたり、「親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要」をおつとめいたします。また、築地本願寺と教区・別院・教堂においても、2024年末までに慶讃法要をおつとめすることになっています。親鸞聖人のご誕生を祝し、立教開宗のご恩に感謝して、あらためて私たちが浄土真宗のみ教えに出遇えたことを喜ぶご勝縁にしたいと思います。
親鸞聖人は、法然聖人のもとで、出家、在家を問わず、凡愚の者も等しく救われる阿弥陀さまの他力本願のみ教えに出遇われます。そして、『大無量寿経』に説かれるこのご本願の救いを「浄土真宗」と名付け、『教行信証』によってその教えを打ち立てられました。したがって、私たちが浄土真宗のみ教えに出遇うことができたのは、親鸞聖人のご誕生と『教行信証』撰述のご苦労によることは申すまでもありませんが、加えて、今日まで800年の永きにわたり、聖人のみ跡を慕う多くの先人方が、み教えを確かな依りどころとして生き抜き、受け継いでこられたからにほかなりません。その意味で、この全国門徒総追悼法要は、私たちに直接、み教えとのご縁をつないでくださった方々を偲ぶ法要と言えましょう。
どのように科学技術が発達し、また医療が進歩したとしても、老・病・死に象徴される、私たちの根源的な苦悩がなくなることはありません。特に、新型コロナウイルス感染症により、当たり前と思っていた私たちの日常は一変しました。自分の思い通りにならないことで、悩みや苦しみを抱え、不安や焦りを感じている方も多くおられるでしょう。
しかし、たとえ悩みや苦しみの中にあったとしても、私たちは阿弥陀さまのご本願に、絶えず喚び覚まされ、導かれながら、お覚りという真実の世界、真理にかなった世界へと歩みを進めることができます。
今後もみ教えを聞き、仏法を依りどころとして生きていくことで、他者の喜び・悲しみを自らの喜び・悲しみとするなど、少しでも仏さまのお心にかなう生き方を目指し、すべてのいのちある者が、お互いに心を通い合わせて生きていけるような社会の実現に向け、精いっぱい努力させていただきましょう。
本日はようこそご参拝くださいました。
本願寺新報2022(令和4)年 12月20日号掲載