前門様のお言葉

本願寺御影堂平成大修復に際しての消息

ご消息1999/01/16

 このたび、有縁の皆様のご尽力とご協賛を得、本願寺御影堂の修復工事を行うことになりました。

 御影堂は文永九年、東山大谷にあった宗祖親鸞聖人の墳墓を吉水の地に移し、廟堂を建て、ご影像を安置したことに始まります。現在の御影堂は本願寺がこの地に落ち着いて四十年余り後、寛永十三年に建築され、今日まで、三百六十三年を経過しました。その間、寛政十二年より十年の歳月をかけた大修理のほか、数度の修理を経ていますが、今日、その傷みが甚だしく、寛政の修復にもまさる大修理を必要とするようになりました。

 御影堂は親鸞聖人のみ教えを讃仰する私たちの心のふるさとであり、よりどころであります。聖人は、真に頼るものなく、自他のいのちを傷つけて生きている私たち一人ひとりによびかけてくださる南無阿弥陀仏のお念仏をおすすめくださいます。聖人のみあとを慕う人々は苦しみも悲しみも悦びも共にしてくださる御開山様親鸞様とこのご真影様を仰がれ、心をこめて御影堂を護り、受け伝えてくださいました。

 このたびの修復には、国の重要文化財として国庫の補助を受けますが、今日、世界遺産として登録されている文化財を創建護持して下さった先人の業績を後世にとどめるとともに、宗祖のみ教えを次の世代へ伝えようとする私たちの決意を表す事業として、僧侶門信徒のご懇念、一人でも多くの方のご協賛を得て、完遂を目指したく存じます。十年の歳月を要すると予想されます工事中には様々の困難があるかと思われますが、立派に完成のうえ、宗祖七百五十回大遠忌をお迎えいたしたいと願っております。

平成十一年(一九九九年)一月十六日
龍谷門主 釋 即 如