前門様のお言葉

蓮如上人五百回遠忌法要御満座の消息

ご消息1998/11/13

 去る三月十四日よりお勤めしてまいりました蓮如上人五百回遠忌法要は、本日ご満座をお迎えいたしました。十期百日間にわたるご法要を厳粛盛大にお勤めすることができましたのは、仏祖のご加護と上人のご遺徳は申すまでもなく、全世界に広がる僧侶門信徒の方々の報恩謝徳のご懇念のたまものと、まことに有り難く存じます。

 浄土真宗は本願成就の南無阿弥陀仏の名号のはたらきによって、凡夫が仏に成る教えであります。しかも、今ここに正定聚の身となることは、生死の迷いの根本を解決し、あらゆるいのちが如来の大悲につつまれていることに気付かされ、人間同士、互いに御同朋であることを知らされることであります。そこから、人々への敬愛のこころ、あらゆるいのちを大切にするこころが深まり、如来のみこころにかなう生き方を志す新しい人生が生まれます。

 このご法要を通して、私どもの「いのち」を育む「環境」問題や「家族」について学びました。私どもの周辺には「いのち」の尊厳を傷つける問題が山積しています。み教えを学び、お念仏を申しつつ、自らの人生の課題として、これらに取り組んでいくことが宗門のすすめています基幹運動であります。

 蓮如上人のご生涯を通じてのご念願は、一人でも多くの人が阿弥陀如来の本願を信じ、お念仏を喜ぶ身になることでした。私たちは、今後、具体的な行動によってお応えいたしたいと思います。そのためには、「聴聞」とともに、お互いに意見を交わし合う「話し合い」の法座を持つことが欠かせません。さらに、み教えが広く行きわたり、次の世代へ受け継がれるよう、文書などによってお寺との交流を密接にする一方、ご本尊阿弥陀如来を中心にした家族生活の形をととのえることも大切であります。

 親鸞聖人によって開かれ、蓮如上人によって広く人々のこころに定着せしめられた浄土真宗のみ教えが、全世界の人々のいのちの依り所となり、こころの灯火となりますよう努めてまいりましょう。

平成十年(一九九八年) 十一月十三日
龍谷門主 釋 即 如