前門様のお言葉

春の法要(立教開宗記念法要) ご門主法話(ご親教)

法話2010/04/15

今、ここに、如来の光

教えを立てられた親鸞聖人

 今年も有縁の皆さまとご一緒に、立教開宗記念法要をおつとめすることができました。

 立教開宗とは、宗祖(しゅうそ)親鸞聖人が浄土真宗という教えを立て、新たな道をつけられた、流れをつけられたということです。それによって親鸞聖人を、宗祖、あるいはご開山(かいさん)と申すのです。

 来年は、ここ本山・本願寺で大遠忌法要をおつとめいたしますが、そのもとは、親鸞聖人が浄土真宗を開いてくださったこと、私が阿弥陀如来に救われて仏になる道を示してくださったことにあります。ですから、その教えの特色を受け止め、その教えによって私が救われる喜びを味わい、御恩報謝する50年に一度の機縁が大遠忌法要です。

 ただ今、おつとめいたしましたのは、共通勤行「和訳正信偈」と申します。

 今から40年ほど前、浄土真宗の立教開宗750年を記念するご法要を迎えるにあたり、親鸞聖人を宗祖と仰ぐ10の宗派の役員の方々が集まり、協力体制を整えようと真宗教団連合という組織が作られました。

 法語の載ったカレンダーでおなじみだと思います。今年の分は240万部余り発行されました。さらに、宗派を超えて一緒におつとめができるようにと制定されたのが共通勤行です。

 平生、漢文で拝読しますお正信偈を和語、日本語に訳してありますので、内容を理解する上でも役に立ちます。

現生正定聚 聖人の特色

 さて、親鸞聖人が浄土真宗を開かれたということは、それまで浄土真宗はなかったということになりますが、厳密に述べようとすると論争になってしまいます。概略を申しますと、師匠である法然聖人が開かれた浄土の教えをより鮮明な形で、はっきりとした形で示してくださったといえるでありましょう。

 親鸞聖人の教えの特色はいくつもありますが、ここでは一つだけ申したいと思います。それは「現生正定聚(げんしょうしょうじょうじゅ)」、この世で信心が定まるとき、往生浄土が定まるということです。

 同じ往生浄土といっても、臨終に阿弥陀如来がお迎えに来てくださらないとお浄土には往(い)けないという考え方に対して、親鸞聖人は、今、ここで、信心が定まると往生が定まると教えてくださいました。

 『一念多念証文(一念多念文意)』という親鸞聖人のご著述には、阿弥陀如来の光は「ときをきらはず、ところをへだてず、ひまなく真実信心のひとをばつねにてらしまもりたまふなり」(註釈版聖典683ページ)とあります。

 ただお浄土往きの切符をいただいて安心するということではなく、今、ここに、阿弥陀如来の光を身に受けるのです。それは、煩悩を依りどころにして生きてきた私が、阿弥陀如来の智慧(ちえ)と慈悲(じひ)が本当の依りどころであると気付かされることです。

 この世にいるかぎり、煩悩を捨てられない私ではありますが、真実の智慧に照らされる厳しさと、真実の慈悲に包まれる安らぎを得て、「火宅(かたく)無常の世界」、煩悩の火が燃えさかる世の中を精一杯生き抜くのです。

 それは、凡夫が互いに支え合う生き方ともいえるでありましょう。宗門では「ともに いのち かがやく 世界へ」をスローガンに御同朋の社会をめざして基幹運動を進めています。一人一人のいのちが輝くような世の中を築くために何ができるか、お寺に集い、仏法を聴聞しながら考えていきたいと思います。

本願寺新報2010(平成22)年5月1日号掲載
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