前門様のお言葉

御影堂平成大修復完成慶讃法要 ご門主法話(ご親教)【2009(平成21)年5月22日から26日】

法話2009/05/22

御影堂は「宗門の要」聖人にお目にかかる私たちの"心のふるさと"

本願寺御影堂(ごえいどう)平成大修復完成慶讃法要が5月22日から26日まで営まれ、5万2000人が参拝した。御影堂には正信偈を唱和する声とお念仏が響き渡り、お念仏のみ教えに遇(あ)いえた喜びの声が相次いだ。法要後には毎日、ご門主がご親教(法話)された。

工事縁に創建時の熱意を感じる

 皆さま、ようこそご参拝になりました。10年ぶりの御影堂を、いかがお感じになりましたでしょうか。

 私には、屋根瓦の美しさとともに、内部の金箔、高いところの彫刻や彩色が印象的です。

 費用の点では、僧侶・門信徒有縁の方々のご懇志、奉讃会を通じたご懇志寄付金および、国庫補助金を頂戴し、工事については、京都府の監理のもと、各地から資材を寄せてくださり専門的な技術と丁寧な作業が行われたおかげと、まことにありがたく存じます。

 この修復工事を縁として、370年前に御影堂が建てられた時の、建築技術とお念仏を喜ぶ方々の熱意を感じました。その時は東本願寺が分立してから30年ばかりであり、日本の人口は今の10分の1くらいであったようです。工事の内容については、テレビでご覧になった方も多いと思いますが、外から見えないところに大事な仕組みがあることがわかります。

大修復は聖人の大遠忌への準備

 蓮如上人の500回遠忌の時から始まった工事ですが、200年前の大修復と同じように、今回も親鸞聖人の大遠忌の準備という意味が込められています。ですから、大遠忌をおつとめする意味、そして本願寺の御影堂の意味、ここにお参りする意味に思いを巡らすにふさわしい機会だと思います。

 私は、御影堂大修復に関する消息を平成11(1999)年1月と今年4月に、また、宗祖750回大遠忌についての消息を平成17(2005)年に発布いたしました。それらで私の思いを述べましたので、できればもう一度ご覧いただきたいと思います。

 少し追加いたしますと、まず、御影堂は、宗祖聖人の御真影(ごしんねい)さまを安置している御(み)堂ですから、聖人にお目にかかるという味わいがあります。お正信偈やご和讃を拝読することは、宗祖からお言葉を聞かせていただくことです。さらには、私の思いを宗祖に聞いていただくとも味わえることでしょう。私の願いをかなえていただきたいということではなくて、今日まで生きてきたわがいのちを、隠すことなく受け止めていただくことです。御影堂は私たちの「心のふるさと」なのです。

御影堂で聖人の仰せを私が承る

 浄土真宗の基本は、煩悩の火が燃え盛る世に生きている私を、救わずにはおかないという阿弥陀如来の願いであり、お誓いである南無阿弥陀仏をわが身にいただくことです。

 親鸞聖人は、お師匠である法然聖人から100日間、「よき人にもあしきにも、おなじやうに、生死(しょうじ)出(い)づべき道をば、ただ一(ひと)すぢに仰(おお)せられ候(そうら)ひしを、うけたまはりさだめ」られました(註釈版聖典811ページ)。ここ御影堂では、私が親鸞聖人から仰せを承るのです。

 もう一つは、今年4月の消息で、御影堂が「宗門の要(かなめ)」という表現をいたしました。扇の要は自分が動くわけではありませんが、各部分が離れ離れにならないようしっかりと周りの動きを支えるものです。宗門においても要として、各地からご参拝いただき、思いを新たにしていただき、それぞれの場に戻って活躍をしていただくことを思い描きました。

 御影堂の修復完成を喜び、関係の方々に感謝を表し、思い新たにお念仏の日々を過ごさせていただきましょう。

本願寺新報2009(平成21)年6月1日号掲載
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