仏教語豆事典

堪忍(かんにん)

 徳川家康の『人生訓』の一つに「堪忍は無事長久の(もとい)」とあります。「ならぬ堪忍するが堪忍」「堪忍袋の緒が切れた」「堪忍してください」と、堪忍は、堪え忍ぶこと、我慢すること、怒りをこらえて他人の過失を許すことを意味する言葉です。

 私たちの世界は、苦しみや悩みが満ちていて、人は堪え忍んで悪をなし、菩薩は教化(きょうけ)のために堪え忍んで苦労しておられるので、現実の世界を、堪え忍ぶ世界という意味の「堪忍世界」とか「堪忍土」といいます。

 また、堪え忍ぶという意味のサンスクリット語「サハー」から、娑婆(しゃば)世界とも呼んでいます。

 菩薩の十地(じゅうじ)(菩薩の修行の位を十の段階に分けたもの)の第一は「堪忍地」で、菩薩がこの位に達すれば苦悩をよく堪え忍ぶといいます。

 このように、堪忍は仏典にしばしば登場します。

 最近は、何事につけても、すぐにカーッとなって「キレる」人が多いようですが、心を大きくもって、グッとこらえましょう。「堪忍は一生の宝」といいますからね。

本願寺出版社「くらしの仏教語豆事典」より転載