地域での活動レポート

お寺を核にした過疎地活性化の取り組み〈福井教区 丹生組 善性寺〉

中部2022/08/08
  • 寺おこし事業

 福井教区丹生組善性寺の山田靖也住職は、もともと名古屋市の一般家庭の生まれで、2006(平成18)年に福井で農業の師匠の元で学びながら、自然農での作物栽培を始めた移住者でした。

 自然農とは、「耕さず、肥料・農薬を用いず、草や虫を敵としない」を原則とした農法で、すべてを自給するところまではいかないものの、農業を生業の一部としていました。

 また、2014(平成26)年には限界集落の福井市八ツ俣町にある古民家を利用して、ヴィーガン料理(動物性食品を使わない料理)の提供、天日塩・オーガニック食材の輸入加工販売、古民家農家民宿「箪瓢草堂(たんぴょうそうどう)」運営や、自然農体験、古民家や空き家の再生を行う「いただき繕福井越廼(こしの)」を開業し営んでいます。

ご縁あって僧侶へ

 山田住職は、僧侶になる前の2015(平成27)年、隣の集落にある光照寺の上田慧恭住職に声をかけられ、同寺の永代経法要にお参りしました。山田住職の想像とは違い、その法要では寸劇や漫才、コーラスを門徒さんと一緒に楽しめるようになっていました。また、その法要で講師をされた報恩寺の林暁住職のご法話において、福島県の子供たちを受け入れサマーキャンプを行った話などを聞き、社会貢献に取り組み、お互いが喜び合える関係を築ける僧侶像に興味を持ちました。山田住職はその場で林住職に僧侶になるための相談をし、林住職の報恩寺に所属して得度(僧侶となること)をしました。

 その後、報恩寺と同じ組内で後継者がいなかった善性寺とご縁があり、2017(平成29)年9月、善性寺住職に就任しました。

寺院での取り組み

 山田住職は、住職に就任してからも、お寺の法務の他にも、落語会やヨガ教室、茶会、育てたもち米を使った餅つきなど、さまざまに地域やご門徒の方と触れ合うことのできるイベントを実施しています。

 また、お寺として以外に、引き続き、農業にも取り組み、耕作放棄地を借りて少しずつ畑を広げ、自給する分と加工品に使うものを中心として、作物を育てています。

 それだけに留まらず、山田住職は、空き家となっている古民家を利用した地域再生を提案しました。地区内にはまだまだ活用できる空き家が存在しており、地域住民と一丸となって「しかうら古民家マーケット」を2018(平成30)年秋に開催しました。空き家に30ものお店が並び、移住希望者には「住み方ワークショップ」なども行い、2日間で延べ1,200人以上が押し寄せました。山田住職は自ら空き家のオーナーとなり移住者を募ったり、古民家を希望者に紹介するツアーも実施しました。

 その後、「移住住職と移住希望者で巡る、空き家ツアー」を企画しました。このツアーは、越前町が後援する移住希望者向けの一泊二日の空き家めぐりで、山田住職が営む古民家農家民宿「箪瓢草堂」を宿泊場所としました。地元に根付くお寺が間に入ってくれるため、移住を考える方は安心感をもって申し込まれていたそうです。

 また、浄土真宗本願寺派と龍谷大学が連携して実施している「龍谷大学農学部インターンシップ」にも、過疎地域の活性化を目的に協力しています。集落に学生が入っていくことで、外部からの地域資源の見直しが期待できることから、受け入れ寺院として率先して参画いただいています。

お寺と地域の関わり

 山田住職からは、お寺と地域の関わりについて、「お寺にはすごいポテンシャルがあります。お寺を中心に、地区ぐるみで町の未来を考え、活性化させられたらいいと思います。お寺と地域は運命共同体です。地域の盛衰はお寺の盛衰、逆もまたしかりです。だから、時間が許す限り、地区の総会やイベントなどに参加し、地域との交流を図るようにしています。お寺が動けば動いただけ、地域に必ず影響を与えると思っています。」と、話されました。


 地域コミュニティとしての寺院の在り方を存分に活用し、地域とともにある寺院として取り組まれている事例を紹介しました。

【古民家農家民宿】

【お寺で茶会】

【お寺で餅つき】

【空き家ツアー】

【龍谷大学農学部インターンシップ】

※「龍谷大学農学部インターンシップ」については、宗派公式WEBサイト「宗門の過疎対策」(https://www.hongwanji.or.jp/jiin/kaso.html#kaso_07)をご覧ください。