親鸞聖人750回大遠忌法要は無事円成いたしました。多くの方々のご参拝、誠にありがとうございました。

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親鸞聖人750回大遠忌法要について 「宗報」2011(平成23)年8月号掲載 新たな始まり 親鸞聖人750回大遠忌宗門長期振興計画の現状 vol.42
本願寺教学伝道研究センターでは、宗門長期振興計画の重点項目⑤「時代に即応する教学の振興」にかかる企画の一つとして教学シンポジウムを開催しています。このシンポジウムは「現代にいきる親鸞聖人」をコンセプトに掲げ、2006(平成18)年から2011(平成23)年までの計6回、総合テーマを『親鸞聖人の世界』として開催しています。

1 今年の教学シンポジウム

シンポジウムのねらい  親鸞聖人がご往生なされて750年が経とうとしている今、お念仏のみ教えは、日本にとどまらず、世界各地で多くの方々のよりどころとなっています。
 現在、本願寺派の教団は、ハワイ開教区、北米開教区、カナダ開教区、南米開教区の4つの開教区と、台湾開教地、メキシコ開教地、オーストラリア開教地、ネパール開教地の4つの開教地、そして、ヨーロッパの各地に8つの浄土真宗協会が点在するヨーロッパ開教地区を海外に有し、それぞれの開教拠点で、お念仏のみ教えがよろこばれています。
 しかし、日本では、言葉や民族をこえてお念仏が広がっている様子を知る機会は、なかなかありません。
 そこで、本年度の教学シンポジウムでは、世界各地で活躍されている念仏者にお話をうかがうことを通して、日本ではなかなか見えてこない、浄土真宗の魅力をあらためて探ります。
 シンポジウムのタイトルは「Namo Amida Butsu~世界に響くお念仏~」です。海外の視座から浄土真宗を捉え直すことによって、お念仏の新たな一面を来場者の皆さまとご一緒に見つけたいと思います。

プログラムについて  本シンポジウムは、2名の先生方に基調提言をいただく第1部と、海外の念仏者を紹介するインタビュー映像をもとに行うパネルディスカッションの2部構成です。

第1部 徳永道雄師・原田マーヴィン師の基調提言  第1部の基調提言では、京都女子大学名誉教授の徳永道雄本願寺派勧学から、浄土真宗の国際伝道についてご提言いただきます。徳永師は、真宗聖教の英語翻訳事業の中心的な役割を長年にわたり担ってこられました。また、海外開教区の視察にも関わっておられます。
 次に、ロサンゼルス近郊にあるオレンジ郡仏教会から、日系3世の原田マーヴィン開教使をお招きし、開教現場の実情についてお話いただきます。メンバー数の減少が深刻な問題になっている北米開教区において、原田師が駐在するオレンジ郡仏教会は、伝道活動が成功している仏教会として大変注目されています。

第1部 徳永道雄師・原田マーヴィン師の基調提言  また第2部では、「浄土真宗との出遇い」「浄土真宗の魅力」「これからの浄土真宗」という3テーマについて、それぞれにインタビュー映像の放映とパネルディスカッションを行います。
 インタビュー映像は、今回のシンポジウムのために、世界各地の僧侶や門信徒の方々のご協力を得て新たに取材したものです。さまざまな国籍や年齢の方々の映像と生の声を通して、海外においてお念仏が大切にされている様子や念仏者の熱い思いに触れることができます。その姿をみることは、親鸞聖人のお膝元である日本にいる私たちにとっても、大いに刺激的で学ぶことの多い機会になることでしょう。
 このインタビュー映像をふまえて行うパネルディスカッションも必見です。ここでは、第1部から引続き、基調提言のお2人にご登壇いただきます。また、パネリストとして、長年ヨーロッパの念仏者と交流をもってきた、元京都女子大学教授の佐々木惠精教学伝道研究センター所長も加わります。なお、元北米開教区開教使で、龍谷大学教授の葛野洋明教学伝道研究センター常任研究員がコーディネーターをつとめます。

パネル展の同時開催  本シンポジウムにあわせて、12月中旬に、聞法会館のロビーにてパネル展示を行う予定です。海外寺院の活動の様子や、その広がりを地域ごとにまとめ、ご紹介いたしますので是非ご覧ください。

2 世界に広がるお念仏

 本シンポジウムにいっそう興味をもっていただくために、本願寺派の海外開教について、簡単にご紹介いたします。

日本人移民とともに ~海外伝道を支える四開教区~
 浄土真宗本願寺派における海外伝道は、100年以上の歴史を持ちます。海外伝道を歴史的に語る上で、その中心となるのは、ハワイ開教区(1889年創設)、北米開教区(1899年創設)、カナダ開教区(1905年創設)、南米開教区(1950年創設)の4開教区です。
 アメリカ合衆国・カナダ、そしてブラジルを中心とする南米大陸には、明治期からの日本人移民とともに、日本人開教使によってお念仏のみ教えが伝えられました。
 当時、他国へ移住するということは並大抵のことではありませんでした。夢を抱いて海を渡った日本人移民とさらにその子孫たちには、とても大きな苦難が待ち受けていたのです。特に、第2次世界大戦中の強制収容や財産没収、そして不当な人種差別という試練は、言葉を絶するほどの凄まじいものでした。
そのような事情のなか、日本人移民や日系2世たちにとって、お念仏のみ教えと寺院の存在は、かけがえのない大きな人生の支えであり、よりどころだったのです。
 時代の移り変わった現在の四開教区では、日本語を母国語としない2世から3世、4世へと世代が進み、開教使は現地生まれの日系3世が中心となっています。そして、仏教会を構成するメンバーは、日系人に限らず多様な文化背景をもつ方々にも及んでいます。
 寺院に集う人々の様子は、さまざまに変化していますが、親鸞聖人のお示しくださったお念仏のみ教えは、いまでも変らず大切に受け継がれています。

非日系人グループの誕生 ~ヨーロッパ開教地区~

 一方、海外へ移住した日本人移民とその子孫によって設立された4開教区とは全く違った歴史を辿ってきた開教地や開教地区も存在します。それは、オーストラリア・メキシコ・台湾・ネパール、ヨーロッパで展開されてきました。新たにお念仏のみ教えに出遇った海外の方々が中心となって、開教事務所または寺院を創設していきました。
 ここでは、具体的な事例として、ヨーロッパについて紹介します。
 ヨーロッパでは、1954年にドイツ人のハリー・ピーパー師(1907~1978)が、大谷光照前門主より帰敬式を受けてヨーロッパで初の浄土真宗信徒となり、2年後、ベルリンにて彼を中心とした「浄土真宗仏教協会」が創立されました。
 また、そのピーパー師に次いでヨーロッパ浄土真宗の草分け的な存在であったのが、ベルギー人のアドリアン・ペル師(1927~2009)です。彼はヨーロッパ初となる浄土真宗寺院「アントワープ・慈光寺」を1979年に開創しました。この寺院の寺号「慈光寺」は、大谷光真門主によって命名されました。
 ヨーロッパ浄土真宗の歴史において、第1世代とも呼ばれるピーパー師とペル師の両人は、先の第2次世界大戦を経験し世間虚仮に目覚め、西洋文明に疑問を抱いて、平和的で寛容な仏教を求められました。その求道の歴史は、「1つの地平線から別の地平線に向かってカーブした高速道路を歩いて来たようなものです」(『私の浄土真宗』稲垣久雄訳、永田文昌堂、1998年)とペル師が表現されているように、決して平坦な道ではなく、困難な歩みを経た末に、やっと辿り着かれたお念仏までの軌跡だったのです。
 現在のヨーロッパ開教地区は、その第1世代から、次の第2世代へと法灯が継承され、ドイツ・ベルギー・スイス・オーストリア・英国・ポーランド・ルーマニア・ハンガリーに、浄土真宗協会やサンガが設立されています。
 浄土真宗のみ教えがヨーロッパにも徐々に広がりをみせはじめています。

宗門長期振興計画における「教学シンポジウム」

 教学シンポジウムは、2006(平成18)年から、大遠忌法要が勤修されている2011(平成23)年までの6年間を通しての開催を予定していました。本年度のシンポジウムは、全6回の最後にあたります。
 教学シンポジウムでは、親鸞聖人が明らかにされた浄土真宗のみ教えが、現代に生きる私たちにとっていかなる意味を持つのかを明らかにすることを目的としています。
 総合テーマ『親鸞聖人の世界』のもと、浄土真宗のみ教えをさまざまな角度からうかがおうと、各年のシンポジウムごとに、異なる次のようなテーマを設定してきました。

  第1回 史実と伝承の聖人像
  第2回 念仏の源流
  第3回 浄土
  第4回 真宗の土徳~地域に薫る念仏~
  第5回 現代における宗教の役割 ―葬儀の向こうにあるもの―
  第6回 Namo Amida Butsu ―世界に響くお念仏―
  また各回講演録も、随時刊行しております。

さいごに

 「教学シンポジウム」は、現代に生きる私たちが親鸞聖人のお示しくださったお念仏のみ教えを、改めて味わわせていただく大切な機会です。特に、このたびは、世界の念仏者からの貴重な声を聞き、そこから新たな視点をいただく試みでもあります。
 各開教区と日本では、念仏者を取り巻く事情に異なる面があります。特に欧米では、日本と比べて、社会のさまざまな問題に対して具体的にどう取り組むのかといったことに対して、宗教者の積極的な発言が求められる場面が多くあります。社会から発言を求められているからこそ、より積極的に社会活動に参画していこうとする傾向を持っていると見ることもできるでしょう。
 海外において日本と違った形で錬磨されてきた各開教区の在り方は、私たちのこれからの在り方を考えていく上でも、示唆に富むアイディアを内包していることでしょう。
きっと、新たな出遇いがあることと思います。皆様のご来場を、心よりお待ちしております。
(教学伝道研究センター)


2011度 教学シンポジウム
  「Namo Amida Butsu~世界に響くお念仏~」

    開催日時:2011(平成23)年12月22日(木)13:00~16:30
    開催場所:本願寺聞法会館3階多目的ホール

第Ⅰ部 基調提言
提 言 者: 徳永道雄(浄土真宗本願寺派勧学・京都女子大学名誉教授)
  原田マーヴィン(北米・オレンジ郡仏教会開教使)

第Ⅱ部 世界の念仏者のインタビュー紹介とパネルディスカッション
パネリスト: 徳永道雄(浄土真宗本願寺派勧学・京都女子大学名誉教授)
  原田マーヴィン(北米・オレンジ郡仏教会開教使)
  佐々木惠精(教学伝道研究センター所長)
〈コーディネーター〉
  葛野洋明(教学伝道研究センター常任研究員)

パネル展示
  「Namo Amida Butsu~世界に響くお念仏~」

    場所 本願寺聞法会館 1階ロビー
    期間 2011(平成23)年12月中旬予定