宗門長期振興計画の重点項目④「伝道態勢の整備」のうち、教学伝道研究センター(本願寺仏教音楽・儀礼研究所)で取り組んでいる、仏教讃歌の新曲制作と既存曲の新編曲について紹介いたします。
── 求められる新しい讃歌 歌は世につれ、世は歌につれ ── と言われるように、好まれる音楽の種類には、流行り(はや )廃り(すた )があります。
親鸞聖人は、当時の流行歌であった今様(いまよう)の節で、人々が口ずさむことを念頭に、ご和讃を執筆されたといわれています。広くみ教えを伝えることが、仏教讃歌の役割の一つであると考えるならば、仏教讃歌にも、それぞれの時代にあったスタイルが求められるでしょう。
特に、情報流通のスピードが速い現代では、流行りのスタイルもめまぐるしく変化しています。それだけに、新しいスタイルによる作品の創作は、仏教讃歌に対する取り組みにおいて、常に考えておかねばならない点のひとつです。
──心に刻まれたメロディー
そして、共同体の歌がもたらす効果としては、人がその共同体から一旦離れた後のことも考えておく必要があります。
例えば、卒業後に行われる同窓会においては、校歌をみんなで歌うことによって、場が一層の盛り上がりを見せます。
これは、校歌というアイテムが、一緒に歌う者同士「仲間である」と改めて意識させてくれる、つまりその場が「自分の居場所」であることを認識させてくれるからに他なりません。
これを仏教讃歌のケースにあてはめてみると──例えば、お寺から少し離れた生活を送っているときに、何らかの縁で、久しぶりにお寺に足を運ぶことがあったとしましょう。その時、幼き日にお寺の日曜学校や幼稚園で歌った曲、あるいは両親や祖父母に連れられてお寺にお参りした時に聴いていた曲を耳にすると、懐かしさと同時にちょっとした安堵を覚える方は、決して少なくないはずです。
メロディーとは、その時々に人の感情を揺り動かすだけではなく、さまざまな思い出とともに人の心に刻まれるものでもあるのです。それだけに、時代を超えてメロディーを受け継いでいくこともまた、大切なことなのです。