御正忌報恩講 ご門主法話(ご親教)

本年も、ようこそ御正忌報恩講にご参拝くださいました。
昨年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」から1年となりますが、被災地においては、9月に豪雨による災害も発生しました。また、液状化による被害は福井県・富山県・新潟県などにも及んでいます。地震並びに豪雨の犠牲となられた方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、被災された皆さまに心からお見舞い申し上げます。一日も早く平穏な日常を取り戻されますことと、このような時にこそ、寺院をはじめとする宗教施設が心の依りどころとなって、皆さまのお力になれることを願わずにはいられません。
また、発生から1週間を過ぎたアメリカ合衆国・ロサンゼルス近郊の山火事は、合衆国史上最悪の自然災害とも報じられています。北米開教区の寺院メンバーにも家屋焼失の報告があります。延焼が続いていますが、一刻も早く鎮火することを願っております。
さらには、2022年2月に始まったロシア連邦によるウクライナ侵攻はいまだに続いており、2023年10月以来の中東における武力衝突でも多くの犠牲者が出ています。私たちは仏教徒として、「すべての者は暴力におびえ、すべての者は死をおそれる。己が身にひきくらべて、殺してはならぬ。殺さしめてはならぬ」(『ダンマパダ』第129偈)というお釈迦さまのお言葉、また「世のなか安穏なれ、仏法ひろまれ」(註釈版聖典784㌻)と願われた親鸞聖人のお言葉を大切にし、争いのない平和な世界の実現を目指してまいりたいと思います。
本年は第2次世界大戦の終戦から80年となります。私たちの宗門も仏法の名において、この戦争にさまざまな形で協力をしました。戦後は、その反省に立った歩みを、果たして十分に進めているといえますでしょうか。また、宗門では、戦争だけでなく、差別を肯定し、それを温存・助長するような法話なども行われてきました。
阿弥陀如来のご本願を聞く私たちは、そのおはたらきによって、私たちの真実の姿、すなわち、命が終わるその時まで煩悩をなくすことのできない自己中心的な私であることを知らされています。そうであるからこそ、社会に迎合し、戦争や差別的政策に協力することの愚かさを知り、時代によって変わることのない、阿弥陀さまのご本願による念仏者の生き方を志すことができます。
終戦80年の年の御正忌報恩講にあたり、あらためて、私たちの生き方を問い直し、念仏者としての歩みを進めてまいりましょう。
本日はようこそお参りくださいました。
本願寺新報2025(令和7)年 2月1日号掲載