シンボルカラーは黄色 自他共に心豊かに生きる社会をめざして
長岡 岳澄
中央仏教学院講師・兵庫県姫路市金蓮寺住職
名作映画の反響
先日、日本映画の名監督である山田洋次監督の「幸せの黄色いハンカチ」を再び見る機会がありました。高倉健さん主演の名作ですので、多くの方がすでにご覧になられたことがあるのではないかと思います。
あらすじとしては、かつて傷害事件をおこしてしまい服役していた主人公が、出所後、かつての妻に、もしまだ待っていてくれるなら、家の鯉のぼりの竿に黄色いハンカチをぶら下げておいてほしい、という葉書を出します。
その後、偶然知り合った若者二人と旅を続け、さまざまな出来事、葛藤を抱えながらも、主人公は、若者二人の後押しもあり、かつての自宅にたどり着き、そこには、数え切れないほどたくさんの黄色いハンカチが掲げられていた、という物語です。感動の名作ですので、まだご覧になっていない方にはぜひお勧めしたい作品です。
名作ですので、この作品の影響は後にも残っていきます。ラストシーンのロケ地となった北海道夕張の炭鉱住宅は保存され、「幸福を希うやかた」という記念館となり、今でも多くの観光客が訪れています。
そして、これらの影響の一つとして、更生保護活動のシンボルカラーが黄色というものがあります。
更生保護活動とは、犯罪や非行を犯した人を社会の中に迎え、地域社会の協力を得て、これらの人たちが自立、改善更生することを助けることによって、安全安心な地域社会をつくっていくことを目指している活動で、「更生保護法」という法律に基づいています。
この活動のシンボルマークが、ひまわりであることも関係しているのですが、「幸せの黄色いハンカチ」で描かれる出所後の主人公が、妻や若者に温かく迎えられていくところから、黄色のシンボルカラーが定着しています。
啓発活動として、時折、姫路城や二条城といった地域の名所が黄色にライトアップされているので、もしかすると目にされた方もおられるかもしれません。
そして、この更生保護活動には、親鸞聖人のみ教えをいただく人たちが、さまざまに社会活動として携わっています。このことは歴史的な経緯もありますが、阿弥陀さまのはたらきを同じくいただく「御同朋・御同行」の具体的な活動として広がっています。
皆うもれることなく
阿弥陀さまは、ご本願に「わたしが仏になるとき、すべての人々が心から信じて、わたしの国に生れたいと願い、わずか十回でも念仏して、もし生れることができないようなら、わたしは決してさとりを開きません。ただし、五逆の罪を犯したり、仏の教えを謗るものだけは除かれます」(現代語版『浄土三部経』29㌻)と誓われました。
そして、この願いを願いの通りに完成され、すべての人々をお浄土に生まれさせ、仏にさせるとはたらいてくださっています。
しかしながら、ご本願には、「ただし、五逆の罪を犯したり、仏の教えを謗るものだけは除かれます」と誓われています。つまり、「すべての人々」ではないということになります。
五逆罪とは、一般には①父を殺す、②母を殺す、③聖者を殺す、④仏の身体を傷つけて出血させる、⑤教団の和合を破壊する、の五つの罪のことです。
また、仏の教えをそしり、正しい真理をないがしろにすることを謗法罪といいます。
親鸞聖人は、ご本願からこの五逆罪と謗法罪の人が除かれていることについて、阿弥陀さまがこの二つの罪の重さを私たちに知らせるために示されたのであり、「すべての世界のあらゆるものがみなもれることなく往生できるということを知らせようとしているのである」(現代語版『尊号真像銘文』6㌻)とお説きくださっています。
日々のニュースを見ていると、日本や世界でさまざまな悲しい出来事が報じられています。私としても、悲しい出来事に接し、これは許せない、この人は罰せられなければならないという思いを抱きます。
しかし、親鸞聖人のみ教えをいただく念仏者として、この私が抱いてしまう思いだけではなく、すべての人々をかならず救うとはたらいてくださっている阿弥陀さまのおはたらきに思いを馳せ、更生保護活動などの社会活動、そして、日々の生活を通して、自他共に心豊かに生きることのできる明るい社会の実現を目指してまいりたいものです。
(本願寺新報 2025年09月01日号掲載)
本願寺新報(毎月1、10、20発行・7/10、12/10号は休刊)に連載中の『みんなの法話』より
※カット(え)の配置やふりがななど、WEBサイト用にレイアウトを変更しています。
※機種により表示が異なるおそれがある環境依存文字(一部の旧字や外字、特殊な記号)は、異体文字や類字または同意となる他の文字・記号で表記しております。
※本文、カット(え)の著作権は作者にあります。