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親鸞聖人750回大遠忌宗門長期振興計画

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本願寺伝道院修復について(2)『宗報』2010(平成22)年2月号掲載 新たな始まり 親鸞聖人750回大遠忌宗門長期進行計画の現状 vol.25
親鸞聖人750回大遠忌宗門長期振興計画「宗務機能の整備・拡充」のうち、重点項目⑮「境内地等の整備」の一環として、 門前町の活性化方策等を含めた周辺施設の整備を進めるにあたり、老朽化著しい明治時代のレンガ建築である 「本願寺伝道院」の修復工事を実施しています。 今回は、伝道院修復までの経緯についてお伝えいたします。

1 雨漏り・落下防止のための素屋根建設

伝道院は、1912(明治45)年の創建以来約100年が経過しており、これまで必要に応じて銅板屋根の葺き替えやテラコッタ (装飾用の素焼き陶器)の補修を行ってきました。しかしながら、1980年代後半ごろから雨漏りが散見され、 建物の内外に老朽化が目立つようになり、風雨などに対する建造物としての基本機能に問題が生じている状態でした。

その原因は、独特な屋根の構造的な特徴にその一端がありました。
ドームや塔の部分には庇(ひさし)がなく、そのため雨水は雨戸の枠からつたって建物内部に浸入しやすく、 屋根飾り石の隙間から、それを支えるレンガの構造部分まで達するようになりました。また外観の美しさを保つために、 軒樋(のきどい)は内樋形式で隠れており、その樋が老朽化のため部分的に腐朽するなどして機能しなくなり、雨水の排水を妨げるようになりました。

また、屋根を飾るテラコッタは、単なる装飾として取り付けられたものではなく、 屋根と一体化していることから、テラコッタよりしみた雨水は、屋根を支える木部やそれを支える レンガまで直接侵入していくこととなり、雨漏れを深刻化させました。

さらには、テラコッタは、完全な防水機能はなく、屋根から流れ落ちる雨により水分を含むことがあり、 特に冬場になると、侵入した水分が凍り、テラコッタを割って漏水を進めてしまいました。
1999(平成11)年、建物の躯体(くたい)そのものに深刻な影響が出始めるとともに、 テラコッタが落下する恐れも出てきたため、早急に雨養生とテラコッタ落下防止のシートや足場をかけました。 そして修復に向けた調査(概算工事費の試算)を行い、さらに雨漏りの心配が完全になくなり、 建物の老朽化の進行を抑えることができる素屋根を建設しました。これにより、将来の修復工事にも対応できる準備を整えられました。

2 修復決定に至るまで

素屋根が建設された当時、伝道院は、本願寺派布教使を育成する住職課程の研修講堂として継続的に使用しており、 その研修施設(会場)の移転先の問題や、親鸞聖人750回大遠忌法要にかかる長期計画の策定に向けて議論されている時期に ありましたため、総合的な観点からすぐには修復の決定に至りませんでした。

2005(平成17)年、「親鸞聖人750回大遠忌宗門長期振興計画」が策定され、3期12ヵ年におよぶ長期計画がスタートしますが、 その計画のなかでも、伝道院が位置する場所的要素から、門前町の活性化を図る一助とする視点や、 布教使の育成を含めた次代を担う「人」の育成という観点からの考え方、さらにはその費用効果からの意見、 また境内地整備計画と密接に関係することなど、さまざまな議論が行われるなか、活用目的の検討は続けられていました。

その後、龍谷大学370周年記念の事業として龍谷ミュージアム構想が具体化され、龍谷ミュージアムと伝道院を関連させることに よる門前町の活性化が論じられるようになります。それを受け、2007(平成19)年、振興計画の総合調整にあわせて、 振興計画が掲げる門前町の活性化と、これまで同様次代を担う「人」の育成として重要な位置づけとなる伝道院を、 境内地の整備として修復することが決定しました。

3 修復に向けて ~建築指導課への聞き取り~

振興計画「境内地等の整備」の一環として修復を行う決定を受け、正式に行政との協議に入ります。
ちょうどそのころ、耐震偽装事件が社会問題化し、建築基本法が改正されました。

このことにより、修復後の一案として提案されていたカフェやショップなどを設置した場合、伝道院を不特定多数の人が使用する建物とするには、研修所として登録されている伝道院の主要用途の変更をする必要が生じてくることがわかりました。

さらには、修復にあたり現行の建築基準法の制限の適用を受けなければならなくなり、この用途変更を満たすため、万が一の地震に備えて耐震構造への変更や、同時に物販・飲食店等を設置することによる耐火構造への変更、および消火設備・防火壁の設置、延べ床面積に応じた防火水槽などを設置する義務が生じてくることがわかり、特徴ある内装や外観を変更しなければならないという大きな問題点が判明しました。

しかしながら伝道院は、建設当時の建築基準にのっとって建てられ、昨今の社会状況に応じて見直しがなされた現行の建築基準法には適合していませんが、既得権が認められた「既存不適格建物」であります。また文化財に指定されていることから耐震補強などは所有者の努力義務として課せられ、現行の建築基準法に規定される義務の履行は求められていませんでした。

そのため、このたびの修復では、当面、不特定多数の方々を受け入れる物販・飲食店等の用途変更は行わず、既存不適格建物の適用内で文化財として求められている耐震補強などを施し、将来的に重要文化財指定を見据えた修理維持管理を行う方針となりました。

4 修復計画の検討について

既存不適格建物として修復を進めるにあたり、それでもなお、大規模な修復を完遂するためには、文化財としての構造補強をしなければならないという課題が残ります。

そこで、京都市文化財保護課と協議を重ねた結果、伝道院の歴史的な重要性に鑑み、その構造対策や改修方法については慎重な対応が必要とされるため、文化財的な価値の保全と将来の有効活用との調和を図るために行政関係者や学識経験者などからなる委員会を設置し、指導助言を得ながら修復計画を立てることとなりました。

およそ2年に及ぶ修復に向けての行政との折衝や調査の結果を経て、伝道院修復工事の基本方針が決定し、現在、ようやく本格的な工事がはじまりました。



伝道院写真 伝道院写真


(財務部)