親鸞聖人750回大遠忌法要は無事円成いたしました。多くの方々のご参拝、誠にありがとうございました。
親鸞聖人750回大遠忌宗門長期振興計画

大遠忌法要


法要のご案内

イベント情報

映像・音楽配信

安穏灯火リレー
定本となる仏教讃歌集の編纂について 『宗報』2008(平成20)5月号掲載 新たな始まり 親鸞聖人750回大遠忌宗門長期計画の現状 vol.6
宗門長期振興計画の重点項目「④伝道態勢の整備」のうち、「現代に即応した儀礼・法要の研究と創設」として定本となる仏教讃歌集の編纂に取り組んでいます。

1 仏教讃歌 ─現代に生まれた仏教文化

そもそも仏教讃歌とは、日本社会の西洋近代化が進んだ20世紀に花開いた、仏教界においては比較的新しい文化です。

明治10年代の終わりに発表された《法(のり)の深山(みやま)》に始まり、まだまだ暗中模索といった感も否(いな)めないながらも婦人会活動の中で仏教讃歌が次第に浸透し、私家版ではあるものの有志によって曲集が刊行されていた明治期の仏教唱歌活動。それに続く、日曜学校を中心に興隆を見せた大正期の讃仏歌活動や、学生青年層を中心に全国的な展開となった仏教聖歌活動。さらに、20世紀後半の合唱ブームとともに盛り上がりを見せた、婦人会の合唱活動。このように仏教讃歌は、常に門信徒を中心とした、近現代仏教文化のひとつの波となってきました。

また作品の数をみても、当研究所において約2,500点の作品と約200冊の讃歌集が確認されているほど、この文化は隆盛を誇っています。僅(わず)か100年ほどの歴史とはいえ、仏教讃歌は、現代の仏教文化のなかでも非常に重要な位置を占めているのです。

なかでもわが宗門は、仏教讃歌の黎明(れいめい)期であった明治期以降、常に仏教讃歌という文化において牽引(けんいん)的役割を果たしてきました。かつての宗祖親鸞聖人700回大遠忌(だいおんき)に際しては、仏教讃歌の創作と普及のために「仏教讃歌刊行普及会」が結成され、讃歌集『BUKKYO SANKA』が刊行されています。ちなみに、今日もっともよく歌われる仏教讃歌《恩徳讃(おんどくさん)》が発表されたのも、同讃歌集においてのことでした。
仏教讃歌 ─現代に生まれた仏教文化
御堂で合唱する門信徒のみなさん
(2007(平成19)年11月22日 御堂演奏会)

2 基準となる楽譜がない!

また、わが宗門における仏教讃歌の重要度は、各種の聖典や、各教化団体から発行されるパンフレットなど、仏教讃歌集以外の各種刊行物に、その作品が掲載されていることからも、ご理解いただけるでしょう。ところが多くの作品が生まれ、多様な媒体に収載され、多くの人々が歌うとなると、避(さ)けては通れない問題が生じてきます。

それは、基準となる楽譜の欠如です。具体的な状況としては、同じ作品の楽譜であるにも拘(かか)らず、異なる出版物においては、編曲の相違(=前奏や伴奏が異なる)や調性の相違(=歌う音の高さが異なる)など各種の異同が見られます。そのため、時折現場での混乱が生じているようで、研究所にも「どの楽譜を参照すればいいのですか?」という問い合わせが、しばしば寄せられています。

3 定本となる仏教讃歌集の編纂

このような状況に対し、現在研究所では宗門において基準となる楽譜を定め、定本となる仏教讃歌集の編纂をすすめています。宗教音楽の世界において、このレヴェルの楽譜集といえば、キリスト教の讃美歌集ぐらいでしょう。当研究所では、仏教讃歌という文化を宗門の内外に広く周知していただくため、また仏教讃歌100年の歴史を常にリードしてきた宗門の集大成となるべく、本事業に取り組んでいます。

そのため、単なる楽譜集の編纂にとどまらず、専門研究者の協力のもと、作品ごとに作詞者および作曲者による原本(あるいは同等の資料)まで遡(さかのぼ)る、学術的な批判校訂作業を踏まえたものとして進めています。

4 門信徒が支えてきた文化だからこそ

とはいえ、研究所のスタッフだけでは、このような事業は到底不可能です。本事業は、現在並行して進めている資料収集において、多くの方々から寄せられる数々の資料なくしては成り立ちません。

その意味で「多くの門信徒によって支えられてきた文化である」という現実を実感できるものになるでしょう。─大遠忌に、仏教讃歌が宗門の盛り上がりの大きな力となることを願っております。
基準となる楽譜がない!
2500点を超える仏教讃歌の資料(研究所所蔵楽譜)

(教学伝道研究センター本願寺仏教音楽・儀礼研究所)