親鸞聖人750回大遠忌法要は無事円成いたしました。多くの方々のご参拝、誠にありがとうございました。
親鸞聖人750回大遠忌宗門長期振興計画

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時代に即応した法要の創設─『宗祖讃仰作法 第三種』の音楽面を中心に 『宗報』2009(平成21)9月号掲載 新たな始まり 親鸞聖人750回大遠忌宗門長期計画の現状 vol.21
親鸞聖人750回大遠忌宗門長期振興計画の重点項目④「伝道態勢の整備」の中、現代に即応した儀礼・法要の研究と創設の一環として、大遠忌法要期間中の本山法要の創設に向けて、全体を通した音源制作、かかる法要差定・作法、並びにご文の選定などを行ってきました。

1 法要は宗教文化の総合体

「仏教音楽」と「儀礼」──本願寺仏教音楽・儀礼研究所は、その名が示すとおり、これら二つの文化を主たる研究の対象としています。

これらの文化は、人々の宗教的な心情や感覚の表れとして生まれ、しかも互いに密にかかわり合いながら、常に人々の宗教的な生活とともに存在してきました。このような視点に立ち、研究所では、これらの文化を個別の事柄として扱うだけではなく、宗教文化という大きな枠組みのなかで総合的に扱っています。

さらに宗教文化といわれるものは、ほかにも仏像や仏画、寺院建築、内陣の荘厳、衣体、作法など、多岐にわたっています。そして「法要」という儀式は、まさにこれらさまざまな宗教文化の要素が、複雑に組み合わさった「宗教文化の総合体」とも評されるべきものでしょう。

来る大遠忌に向け、宗門長期振興計画の一環として研究所に付された課題の一つが、この「法要」を新たに創設する事業でした。

2 『宗祖讃仰作法 第三種』の基本方針

周知の通り、来る大遠忌に向け、本願寺および大谷本廟の作法として、2008(平成20)年8月に三種類の『宗祖讃仰作法』が新たにご制定となりました。 これらの作法制定に向け、大遠忌法要創設研究会(式務部と共管)において当研究所は、主に第三種の創設を担当しました。

この第三種の特徴は、一般寺院向けの経本の表紙に『宗祖讃仰作法(音楽法要)』と記されているように、いわゆる音楽法要として創設されたことにあります。 その理由は、音楽面において「時代に即応する」ことが、課題の一つとして認識されていたからでした。では、音楽的に「時代に即応する」とは、どの様なことを指すのでしょうか。

わが宗門で音楽法要といえば、一般に「声明に替えて西洋音楽を用いた法要」と認識されているでしょう。また今日の日本社会では、 西洋音楽が日常の音楽の基本となっています。このような状況に鑑みれば、大衆唱和を念頭においた場合(大衆唱和を求める声は時代の要請でもあり、 法要の創設に当たっては、これも条件の一つとなっていました)、音楽法要は、基本的に「時代に即応した」ものと判断されるでしょう。

このような考えに基づき、第三種は音楽法要として創設されることになりました。

3 音楽法要として「時代に即応する」には

しかし、実際の創設にあたっては、懸念される事柄もありました。それは、すでに発表されている音楽法要の普及率が「必ずしも高くない」という事実です。 この点については、法要の創設に先立って行われた研究所での調査・分析の結果から、讃歌衆(一定の音楽的な技量を有する門信徒で構成される合唱団) の存在を前提に音楽法要が創られてきたことが、主たる原因となっているという結論に至りました。

確かに宗門内では、仏教婦人会を中心に合唱団が結成され、仏教讃歌の合唱活動が盛り上がりを見せています。 しかし、合唱団の多くは、教区や組という単位で組織されたもので、寺院単位の合唱団となると、全国の1万ヵ寺に対して、 僅かに100ヵ寺程度という状況です。これでは、音楽法要を勤めようとしても、物理的に難しいと言わざるを得ません。

さらに音楽法要の多くには、合唱が音楽的な中心をなしています。しかし、この合唱を担当する讃歌衆は、声明が特別に訓練を受けていない人々には難しいのと同様に、 音楽的な訓練をある程度受けた人でないと、なかなか務まりません。この点もまた、音楽法要勤修のハードルを高いものとしています。

これらの点に鑑み、大衆唱和を前提とした音楽法要を創設していく上で、さらに次のような方針が採られました。 ①基本的には、特別な音楽的訓練を受けていない出勤僧侶と参拝者のみでも法要として成り立つ音楽的構成とする。 ②「ご文」を唱える部分の旋律は、親しみやすく、しかし荘厳さに欠けないものとする。 ③さらに音楽的に豊かなものとするため、これらの基本構成の上に、雅楽や讃歌衆による合唱を加える。

見方を変えれば、こうした方針からは、音楽法要であっても、あくまで主体は出勤する僧侶と参拝する門信徒 (讃歌衆と楽人、そしてそれらの奏でる「音楽」が中心ではない)だということが、ご理解いただけるのではないでしょうか。

4 「時代に即応する」法要としての課題

ここまでは音楽面を中心に、「時代に即応する」とは何か、について述べてきました。しかし、はじめに述べましたように、 法要とは「宗教文化の総合体」として存在するものです。その意味で、第三種に準じた一般寺院向けの『宗祖讃仰作法(音楽法要)』 を勤められる際には、音楽以外の要素についても考慮されねばならない事柄が多くあると言えるでしょう。

例えば「ご文」について。第三種の場合、その基本的な構成は「正信念佛偈」と「和讃六種」という、伝統的なものとなっています。 具体的には、今の時代に合わせて現代語で新たに書き下ろすのではなく、むしろわが宗門の門信徒にとって最もなじみの深い「正信偈六首引き」 の構成に倣(なら)いました。これは、「ひろく親しまれているご文」を唱えることを重視した結果です。

この例からは、新しいものを導入することだけが「時代に即応する」とは限らない、とご理解いただけるでしょう。 言い換えれば、「時代に即応する」というのは、法要を構成するさまざまな要素が、人々の身体に「感覚として」どれだけ浸透しているかに左右されるのではないでしょうか。 『宗祖讃仰作法(音楽法要)』を勤められる際には、その点に留意いただければと思います。

(教学伝道研究センター・仏教音楽儀礼研究所)